「7400億円の赤字」でも戻れない――名車フィエスタすら切り捨てた、120年企業の「大衆車」との決別
フォードは120年の歴史で最大の転換期にある。EV投資に数百億ドルを投じる一方、欧州市場での低収益車から撤退し、ソフトウェアや高価格帯車に経営資源を集中。競争激化と規制強化の中、利益モデルの再構築が急務となっている。
自動車産業の変化を反映

フォード・モーターは、120年以上の歴史のなかで最も激しい変化に直面している。技術革新だけでなく、収益の上げ方や組織の構造、製品の販売方法、地域事業の配置に至るまで、経営の根幹を作り直す改革が進行中だ。当初は電動化を強く推し進めていたが、世界各地で電気自動車(EV)の普及が予想に届かず、中国メーカーとの価格競争も激化した。加えて、電動化への巨額投資が経営を圧迫している。
こうした状況を受け、フォードは戦略を修正した。事業を切り分け、利益の出る仕組みを整え直すとともに、ソフトウェアや自動運転技術への資源集中を進めている。欧州事業の効率化も急務となっている。
背景には、環境規制の強化や、車両の仕組みがソフトウェア中心に変わったことがある。サプライチェーンの再構築や、テクノロジー企業の参入による市場の変化も、これまでにない決断を促している。
変革の本質は、単に車を製造して売るモデルから、ソフトウェアで高い利益を確保するモデルへの移行にある。中国勢が電池から半導体まで自前で揃える垂直統合で攻勢を強めるなか、フォードはソフトウェアの自社開発にこだわりつつ、ハードウェアは効率的に外部調達する柔軟な体制を目指している。投資した資本が利益を生まないリスクを抑え、資本効率を最大化するための戦略である。