全固体電池は「EV」の価値をどう変えるか? 日本勢の遅れと、中国・韓国勢の先行が描く世界市場の攻防

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日本勢は全固体電池の完成度向上に時間を費やす一方、中国や韓国は2024~2027年に市場投入を進め、2030年の世界EV市場で40%のシェア獲得を狙う。技術と量産の勝負はこれから始まる。

全固体電池で巻き返しを狙うトヨタ

トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)
トヨタのロゴマーク(画像:AFP=時事)

 日本の主要産業は電気自動車(EV)分野で後手に回るが、全固体電池が状況を一変させる可能性を秘めている。特許数で先行するトヨタ自動車は、2020年代前半の実用化を目標に掲げてきた。しかし出光興産との連合計画は現状、2027年から2028年の限定的量産が現実的なスケジュールとなっている。

 この数年の停滞は、覇権争いにおいて致命的な意味を持つ。中国の上海蔚来汽車(NIO)や上海汽車集団(SAIC)は、理想的な技術を待たず2024年から半固体電池を市場に投入し、既存の生産網を活用して利用者を囲い込んだ。SAICや比亜迪(BYD)も、2026年から2027年の全固体電池投入を視野に入れている。韓国のサムスンSDIは2027年の量産開始を掲げ、体積エネルギー密度900Wh/Lという高い目標を示す(次世代社会システム研究開発機構『全固体電池白書2026年版』)。

 日本勢が完成度の追求に時間を費やす間に、競合は市場標準や供給網を確立する可能性が高まっている。フォルクスワーゲンも米クアンタムスケープと連携し、開発を継続している。

 国内企業も対抗策を急いでいる。スズキは2026年3月4日、2006年から研究を続けてきたカナデビアから全固体電池事業を譲り受ける契約を結んだ。譲渡額は非公開だが、カナデビアが2026年7~9月期に特別利益として74億円を計上する見込みであることから、相応の規模であることが推察される。

 スズキは液漏れのない高い安全性を持つ技術と、2023年に半導体製造機器メーカーから受注した実証拠点を継承する。次世代社会システム研究開発機構の予測では、市場規模は2030年に150億ドルに達し、年平均成長率は56.6%に及ぶ。技術基盤を自前で確保したことは、巨大市場への参入が不可欠であることを示す。

 一方で足踏みが続く理由もある。現行のリチウムイオン電池が生む利益や、既存投資の回収を優先する企業の論理が、技術移行の壁となっているのだ。

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