全固体電池は「EV」の価値をどう変えるか? 日本勢の遅れと、中国・韓国勢の先行が描く世界市場の攻防
日本勢は全固体電池の完成度向上に時間を費やす一方、中国や韓国は2024~2027年に市場投入を進め、2030年の世界EV市場で40%のシェア獲得を狙う。技術と量産の勝負はこれから始まる。
将来性と期待値

全固体電池が用いる固体電解質には可燃性の有機溶媒が含まれない。熱暴走や発火のリスクを大幅に抑えられるため、ブランド価値の毀損や保険コストの増大を防ぐ役割を果たす。一般的なリチウムイオン電池の作動範囲はマイナス20度から60度だが、全固体電池はより広い温度域で運用でき、実地検証も進んでいる。
利点はエネルギー密度にも及ぶ。リチウム金属負極との組み合わせで、現行電池を大きく上回る容量を実現する。リチウムイオン電池の航続距離は300kmから500km程度、大容量型でも1000kmが目安だが、全固体電池は1000kmを超える可能性がある。EV普及を阻む距離への不安を解消する効果もある。
給電時間も短縮される。従来は急速充電で30分から1時間30分を要したが、全固体電池では10分から15分程度の超急速充電が可能となる。充電施設の回転率が高まり、都市部での土地活用やインフラ投資の回収においても重要な要素となる。
寿命についても、リチウムイオン電池の約10年に対し、全固体電池は潜在的に40年の耐用が見込まれる。電池が車体の寿命を上回ることは、中古車の残価評価を変え、メーカーにとって新車販売中心のモデルから、電池を長期資産として循環管理するサービスへ事業形態を移す動機となる。
さらに、バルク型や薄膜型など多様な形状に対応できる特性は、移動体以外の機材への応用も容易にし、幅広い産業での収益機会を生む。2030年までにスマートフォンなどの電子製品で20~30%の採用が見込まれ(同白書)、ドローンや宇宙航空など高付加価値分野への需要拡大も期待されている。