なぜ、地方の国道には「コイン精米機」が点在するのか?

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地方の国道沿いに並ぶコイン精米機は、30kgの米袋を扱う高齢農家の自立的食料確保を支えるインフラだ。2024年の基幹農業従事者平均年齢は69.2歳に達し、機械と道路網が地域の食生活をつなぐ現実を示す。

自家消費米の流通

コイン精米機(画像:写真AC)
コイン精米機(画像:写真AC)

 戦後の農村では、米は出荷する商品であると同時に、家族が一年を生き抜くための主食でもあった。収穫した米の一部を販売し、残りは自家消費用として玄米のまま保管する習慣は今も根強い。玄米は白米より酸化や虫害に強いという利点がある。

 コイン精米機が登場する以前、機械を持たない農家は業者に精米を委託していた。しかし、預けた米より戻る量が減る「目減り」や、他人の米と混ざる不安がつきまとった。旧大野村で生まれたコイン精米機は、投入した分が確実に戻る安心感を提供したと考えられる。1996(平成8)年には玄米を残さない「残粒ゼロ」の仕組みが導入され、モチ米とうるち米を交互に精米しても混ざらない技術へと進化した。自分の米の純粋性を守る機能でもある。

 1995年の新食糧法施行により政府の統制が緩和されると、農村部では自宅消費のために玄米を精米するニーズがさらに高まった。一般的な加工食品は工場から家庭へ一方通行で届けられるが、玄米は家庭で保管したものを精米所で加工し、再び家庭に持ち帰る。コイン精米機は、こうした独特の利用形態を支え、農村の日常的な食生活の一部として機能している。

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