コンパクトカー市場「下位グレードは存在感なし?」 290万円のフィットが売れ筋、メーカーが加速させる「高単価シフト」という現実

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都市部で支持を集めるコンパクトカー市場は、実用性と燃費に加え、安全装備や上級グレードへの需要が拡大。2025年4~9月の販売ではヤリスやカローラが上位を占め、価格帯170~290万円でも「手の届く贅沢」志向が浸透している。

デザインで選ぶ層の存在

「BMW X1」(画像:ヤナセ)
「BMW X1」(画像:ヤナセ)

 クルマ選びにおいて、実用性や価格だけでなく、自分好みのデザインや世界観にこだわりたいと考える層も一定数いる。ナイルが2025年3月に全国の男女2205人を対象に行った「車のカスタマイズに関する調査」によると、「車をカスタマイズしたいと思いますか、またはしていますか」という問いに対し、36.6%が「はい」と回答した。

 さらにカスタマイズの目的については、「デザインや内装をかっこよく、または個性的にしたい」が35.9%で最多となり、「ほかの人と違う車にしたい」という回答も5.8%見られた。これらの結果から、クルマを移動手段としてだけでなく、自己表現の一部として捉える意識が一定程度浸透していることがうかがえる。クルマは所有者の個性を映し出す存在となっており、この傾向はコンパクトカーにおいても変わらない。

 こうした志向は、取り回しや価格面で所有しやすいコンパクトカーにおいても例外ではない。サイズや利便性を重視しつつも、内装の質感や装備内容、安全性能で妥協したくないという理由から、あえて上級グレードを選ぶケースも考えられる。

 また同等の価格帯でより個性的な外見や装備を求め、外国メーカーのコンパクトカーに目を向ける選択肢もある。輸入コンパクトカーは、メーカーごとの思想が反映された造形や特徴的なカラーリングを強みとするモデルが多い。2024年4月に発表された「かわいい輸入車に関するアンケート」によるランキングでは、1位がミニ、2位がミニ クロスオーバー、3位がポロと、上位をコンパクトクラスが占めた。

 注目すべきは、2位に「ミニ クロスオーバー」がランクインしている点だ。これは近年、高級感のあるモデルのなかでもスポーツタイプ多目的車(SUV)スタイルを採り入れた「プレミアムコンパクトSUV」への関心が高まっていることを示す一例といえる。

 メーカーにとってこれらの車種は、新しい顧客をブランドの世界に引き込み、将来的なファンを育てる窓口となっている。実際、世界的に見てもコンパクトSUVの市場は一定規模を維持しながら推移している。グローバルインフォメーションが2025年9月に紹介した調査リポートによると、2024年時点で世界のコンパクトSUV市場規模は約5401億米ドルと推定されている。

 なかでもプレミアムコンパクトSUVは、高級感のある内外装や充実した装備を備えながら、車体サイズは比較的抑えられており、道路環境が限られる日本でも扱いやすい。車内空間に余裕があり、荷物の積載性にも優れるほか、燃費性能や維持費の面で大型SUVより負担が軽い点も支持される理由だ。

 さらに最新世代の運転支援技術が投入されるケースも多く、それでいて同一ブランドの上位モデルと比べれば価格は相対的に抑えられている。こうしたブランドの魅力と実用的価値のバランスのよさが、「BMW X1」や「アウディQ3」といった車種の人気を底支えしていると考えられる。

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