マリア、クララ、ビクトリア……なぜ船には「女性の名前」が多いのか? 大航海時代から続く文化とジェンダー平等の影響とは

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船舶に女性名が付けられる背景には、大航海時代から続く言語的・文化的伝統と古代神話が深く関与している。1492年のサンタ・マリア号をはじめ、世界周航を成し遂げたビクトリア号など歴史的名船は女性名が多く、現代でも欧米を中心に根強く残る一方、ジェンダー平等の意識変化により伝統の存続が揺らいでいる。

船命名に込められた慣習と信仰

サンタ・マリア号(レプリカ) スペイン・マディラのフルカル港にて(画像:Dietrich Bartel)
サンタ・マリア号(レプリカ) スペイン・マディラのフルカル港にて(画像:Dietrich Bartel)

 古来、船乗りは重労働のため主に男性が従事してきた。遠く離れた海上で、母親や妻、恋人と隔絶された環境下で、船に対する望郷の念から女性として慕う文化が生まれた。

 初期の航海は、生死をかけた大博打であった。船乗りははぐれ者も多く、船内での反乱も起こり得た。船を女性に擬人化することは、こうした荒くれ者の心理を安定させる効果があったと考えられる。

 欧州では、女性が船を娘や姉妹に例えて命名する慣習が根付いた。命名式を行わずに進水させることは、不運を招くと信じられていた。

 後に飛行機が発明されると、機体に女性の絵が描かれることが増えた。これは船の伝統の名残りと見られている。

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