トヨタはなぜ38億円も? EUカルテル摘発で浮き彫りになった「リサイクル費用」の責任! そもそも誰が負担すべきなのか

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欧州委が自動車15社に計4.58億ユーロの課徴金――約15年続いた自動車リサイクル分野でのカルテルが摘発された。トヨタや日産など日本勢も対象。EUと日本の制度差も浮き彫りに。リサイクル費用は誰が負担すべきか、再考を促す契機となる。

ユーザー負担に見る制度設計の違い

EU本部(画像:写真AC)
EU本部(画像:写真AC)

 今回のカルテル報道を目にしたとき、筆者(小田坂真理雄、国際トラフィックライター)は「環境に厳しいEUが、自動車リサイクルでは遅れていたのか」と感じた。

 というのも、日本では2005(平成17)年1月、自動車リサイクル法が完全施行されており、所有者・メーカー・リサイクル事業者の役割が明確に定められていたからだ。EUでカルテルがまさに行われていた時期の話である。

 自動車リサイクルという点では、日本は世界の最先端を走っているといってよい。2022年の実績では、シュレッダーダストのリサイクル率は96.8%、エアバッグ類は95%。1台あたりの最終処分量はわずか6kgにとどまっている。不法投棄車両の減少も、自動車リサイクル法の効果といえる。

 ただし、EUとの大きな違いは、自動車ユーザーがリサイクル料金を支払っている点にある。日本の自動車リサイクル法では、リサイクル費用はユーザーが排出者責任として負担する。一方で、自動車メーカーや輸入事業者は、処理が困難なフロン類、エアバッグ類、シュレッダーダストのみを対象に、引き取りとリサイクルの義務を負っているだけだ。この仕組みは、ユーザーにとってEUとの大きな違いといえる。

 一方で、EUのように拡大生産者責任によって、すべての負担をメーカーに押し付けるやり方には疑問の声もある。企業活動に大きな負担となるだけでなく、拡大生産者責任を導入していない国や地域のメーカーを有利にしてしまうという指摘も根強い。EUと日本、どちらの方法が正しいかを一概に決めることはできない。そもそも

「自動車のリサイクル費用を誰が払うのか」

という問い自体が、永遠の課題なのかもしれない。

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