EVは本当にエコ? タイヤ粉塵&ブレーキパッド毒性という現実! それでもガソリン車よりマシ? 走行スタイルでPM排出量「少なくなる」研究結果も

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EVの環境への影響は、排気ガスにとどまらず、タイヤやブレーキパッドから発生するPMにも及ぶ。最新の研究によると、EVは走行条件次第でガソリン車よりもPM排出量が少ない場合があることが示唆され、回生ブレーキシステムがその要因となっている。しかし、タイヤやブレーキパッドからのPMには健康リスクがあり、その影響を抑えるための技術革新が急務である。

車重40%増が招くPM問題

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 自動車が環境に与える悪影響は排気ガスだけではない。タイヤやブレーキパッドの摩耗によって発生する粒子状物質(PM)も深刻な問題となっている。

 電気自動車(EV)は排気ガスを排出しないが、一般的に同クラスの内燃機関車よりも40%ほど車重が増す。その結果、タイヤの摩耗が早まり、より多くのPMが発生することが懸念されている。

 環境に優しいとされるEVが、逆にPMを多く排出する可能性があるのは皮肉なことだ。しかし、実際の影響はどの程度なのか。その実態を探る。

走行条件で変動するEVのPM排出量

論文「Electric versus gasoline vehicle particulate matter and greenhouse gas emissions: Large-scale analysis(EVとガソリン自動車の粒子状物質および温室効果ガス排出量:大規模分析)」(画像:バージニア工科大学)
論文「Electric versus gasoline vehicle particulate matter and greenhouse gas emissions: Large-scale analysis(EVとガソリン自動車の粒子状物質および温室効果ガス排出量:大規模分析)」(画像:バージニア工科大学)

 米バージニア工科大学交通研究所(VTTI)の研究チームは、2025年1月に学術誌「Transportation Research Part D: Transport and Environment」でEVのPM排出量に関する研究結果を発表した。調査によると、走行スタイルによってはEVの総PM排出量が

「むしろ少なくなる」

という。車重の重いEVが、ガソリン車よりもPMを抑えられるのはなぜか。

 まず、研究チームは車両の速度と重量を考慮したブレーキとタイヤのPM排出量を計算するモデルを開発した。分析対象は、重量やサイズの異なるEV、ガソリン車、ハイブリッド車の計24台。

・市街地走行
・高速道路走行
・ストップ&ゴーの多いアグレッシブな運転

といった異なる条件下で、PM排出量を測定した。

 分析の結果、「交通量が多い」状況ではEVのPM排出量はガソリン車よりも少なかった。しかし、「交通量が少ない」状況では逆にEVのPM排出量が増加した。

 総合的に見ると、走行時間の15%以上が市街地での運転であれば、EVはガソリン車よりもPM排出量が少なくなることが示唆された。

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