「手軽サイズの車に乗りたい!」 新型ジムニー「5日で5万台」の大ヒットも、日本車の巨大化が全然止まらないワケ
高価格化進む市場で求められる小型車

メーカーが手軽サイズの車を積極的に開発しない背景には、収益性の面での課題がある。車両価格が低い場合、1台あたりの利益は限られる。一方で、高額な車両は利益率が高く、SUVや高級セダンといった単価の高いモデルは、売れる市場であればメーカーにとって魅力的となる。
この傾向は、国内市場の縮小とも関連している。少子高齢化や若者のクルマ離れによって、日本の自動車市場は伸び悩んでいる。しかし、新興国や北米市場では、一定の価格帯の車が売れやすい傾向が見られる。特にSUVの人気は世界的なトレンドとなっており、グローバル市場を視野に入れた場合、大型車のほうが投資回収の面で有利となる。
また、安全性や環境規制の強化が開発を難しくしている要因のひとつである。衝突安全性能を確保するためには、ボディを頑丈にする必要があり、一定のサイズと重量が求められる。さらに、ハイブリッドやEV化に伴い、バッテリーを搭載するためのスペースを確保しなければならず、これも開発のハードルとなっている。このような要因が、「小さくて安い車」よりも、「大きくて高価格な車」を作りやすい環境を生み出している。
一方、メーカーが
「世界市場の論理」
に基づき大型化を進めているなか、販売データは「小さな車が十分に求められている」ことを示している。2024年の新車販売台数を見ても、軽自動車と5ナンバーの小型乗用車は全体の7割以上を占めており、国内ユーザーの多くは経済性や運転のしやすさを重視して、手軽サイズの車を求めている。
それにもかかわらず、大型化の流れは止まらない。結果として、欲しい車が見つからないと感じるユーザーは増え、クルマそのものへの関心が薄れていく可能性がある。移動手段として、駐車しやすく、維持費が安く、取り回しのよいサイズの車の価値は依然として高い。しかし、メーカーの戦略はこの需要と必ずしも一致していない現状がある。