優先席「譲るつもり」はウソだった!? 座る人は「約7割」 その大半が抱える“矛盾”を熟考する
「誰かが譲る」の集団心理

「席を譲ろう」と考えていても、実際には行動に移せないことがある。その背景には、さまざまな心理的要因や社会的要因が影響しているだろう。
まず、座席に対する「心理的所有」の感覚が挙げられる。一度座ると、その席を
「自分のもの」
と感じやすくなる。単に座席を確保しただけのつもりでも、「せっかく座れたのだから手放したくない」という気持ちが無意識に働くことがある。特に、長時間労働や疲労が蓄積していると、この感覚はより強まる傾向にある。「譲るつもり」はあっても、実際に立ち上がるには「今この席を手放すべきか?」という判断が必要になる。しかし、疲れていると決断を先送りしやすく、
「もうすぐ降りるかもしれない」
「ほかの人が譲るのではないか」
と考えてしまうこともある。
次に、「譲る = 相手を評価する」という側面が、行動のハードルを上げている可能性がある。席を譲ることは、「あなたはこの席が必要な人だ」と相手を評価する行為にもなる。日本ではこの点が難しく感じられることが多い。
例えば、高齢者でも健康そうに見える場合、「譲ることでかえって失礼にあたるのではないか」とためらうことがある。また、障害の有無は外見だけでは判断しにくいため、「見た目で決めつけてしまっていいのか」と迷いが生じることも少なくない。こうした戸惑いが結果的に「何もしない」という選択につながることもあるだろう。
さらに、集団心理の影響も無視できない。優先席には複数の人が座っていることが多く、
「自分が立たなくても誰かが譲るだろう」
という心理が働きやすい。周囲の誰も譲らない状況を目にすると、それが「この場では譲らなくてもよい」という無意識の共通認識になりやすく、結果として誰も立ち上がらないということも起こりうる。
席を譲る行動には、単なるマナー意識だけでは説明しきれない心理的・社会的な要素が絡んでいる。こうした要因を理解し、誰もが自然に譲り合える環境をつくるにはどうすればよいか、改めて考えてみる必要がありそうだ。