「EV大型トラック」は普及するか? 最大航続距離500km、メルセデスベンツの革新的「eアクトロス600」を通して考える
充電時間大幅短縮

eアクトロスの市場開発において、メルセデス・ベンツは車両本体とともに大容量の急速充電システムの構築に注力している。2024年4月22日に発表された公式リリースによると、メルセデス・ベンツは“メガワット急速充電器”の開発に成功し、現在、実用化に向けた開発の最終段階にあるという。
現在、EV大型トラック用の急速充電システムの最大出力が400kWhであるのに対し、メガワット充電器は700kWh以上といわれている。今回、メルセデス・ベンツが実用化に向けてテストしている急速充電器の最大出力は1000kWhである。
一般的に、定期便に使われる大型トラックの1日の走行距離は最大約1000km。つまり、最大航続距離500kmを達成したeアクトロス600の場合、ワンストップの急速充電で運行することができるのだ。
600kWhのバッテリーの場合、現行の400kWh急速充電器の充電時間は1時間半未満である。1000kWhなら40分で充電できる。これなら高速道路のサービスエリア(SA)でのちょっとした休憩時間に充電が完了する。また、1台あたりの充電時間が短くなれば、急速充電ステーションの回転率も上がる。
これは急速充電ステーションの運営だけでなく、実際にEVトラックを運行する運送事業者にとっても非常に有利だ。気になるのは、この高性能急速充電システムのイニシャルコストとランニングコストだが、メルセデス・ベンツはこのコストについてまだ公式発表をしていない。
いずれにせよ、メガワット急速充電システムの提供は、多くの運送事業者が抱える充電ステーションでの最大航続距離不足とタイムロスの問題に対する大きな解決策となる。
しかし、前述したようにその設置・運用にはそれなりの費用が必要であり、なかなか普及は進まないだろう。当初は長距離トラックの多い幹線道路のSAに限定されることが推測できる。