「京都市にだまされた」 地下鉄が来ず、大学が逃げた街「洛西ニュータウン」は再生できるのか

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京都市西京区の洛西ニュータウンで、若い世代を呼び込む地域活性化の取り組みが始まった。果たして成功するのだろうか。

人口は1990年をピークに減少の一途

老朽化した施設が少なくない洛西ニュータウン(画像:高田泰)
老朽化した施設が少なくない洛西ニュータウン(画像:高田泰)

 京都市西京区の洛西ニュータウンで若い世代を呼び込む地域再生の取り組みが始まった。全国的にニュータウン再生の成功例は多くないが、果たして成功するのだろうか。

「地下鉄が来るというから引っ越してきたのに、京都市にだまされた」
「大学がなくなって若い人の姿がさらに減った。今では街自体が老人ホームや」

洛西ニュータウンの中心部に位置するバスターミナル。2月下旬の週末、バスを待つ高齢の女性ふたりに話を聞くと、こんな不満が返ってきた。

 このうち、70代の女性は入居が始まって間もない1970年代末、夫とともに引っ越してきた。専業主婦をしながら子どもふたりを育てたが、子どもたちは就職や進学時に洛西ニュータウンを離れている。

「洛西は暮らしやすい場所だけど、子どもたちは街中がいいみたい」

と残念がっていた。

 洛西ニュータウンは高度経済成長期の1970年代、西京区南西部の大原野地区と大枝地区にまたがる丘陵部約260haに市が整備した。計画戸数1万900戸、計画人口4万900人で、入居が始まったのが1976(昭和51)年。公営住宅、都市再生機構(UR)の分譲・賃貸住宅、戸建てなどさまざまな住宅が整備され、ほぼ計画戸数並みの数になる。

 しかし、人口は2020年の国勢調査で約2万2000人。1990(平成2)年の約3万6000人をピークに減少を続け、計画人口のほぼ半数まで落ち込んだ。最も多い年齢層は全体の13%を占める70~74歳。65歳以上が全人口に占める割合を示す高齢化率は、市全体の28%を大きく上回る43%に達する。

 建設当時、市は市営地下鉄の東西線が延伸すると宣伝していたが、延伸は2008年に開業した右京区の太秦天神川駅でストップした。建設費用が当初予定の2倍以上に当たる約5500億円に膨らみ、市営地下鉄の経営が悪化したためだ。

 洛西ニュータウンのすぐ近くに1980年、京都市立芸術大学が移転し、地域のシンボルになっていた。しかし、芸大は2023年10月、下京区の京都駅近くに全面移転した。施設の老朽化と開発の手が及んでいなかった京都駅東側再開発の目玉にすることが理由だ。洛西ニュータウンは芸大生が消え、高齢者の姿がこれまで以上に目立つようになった。

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