今こそ「夜行列車」の復活を! 高速バスも車中泊も安眠には程遠い、「快適旅」という原点に立ち戻れ

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車中泊も高速バスに押されて、いまや存在感が弱まっている夜行列車。今回はその独自の魅力と有用性について解説する。

車中泊人気は10年以上前から

Googleでの検索回数がわかる「Googleトレンド」で見た「車中泊」の検索データ(画像:(C)Google)
Googleでの検索回数がわかる「Googleトレンド」で見た「車中泊」の検索データ(画像:(C)Google)

 例えば、車中泊の隆盛がそれにあたる。日中は観光地を巡り、夜はホテルや旅館に泊まらず、道の駅や高速道路のサービスエリアを利用する車中泊は、旅行のひとつの在り方として多くの人に受け入れられている。

 車中泊が普及したのは2009(平成21)年頃からだ。それ以前から車中泊を利用して長期旅行をするリタイア世代は多かったが、長引く不況を背景に、この時期から宿泊費を節約する目的で利用者が拡大した。車中泊そのものを楽しむ人も増えているが、あくまで「宿代を節約したい」という欲求に重きが置かれている。

 高速バスの普及も安価な運賃に尽きる。例えば、東京~大阪間で「のぞみ」普通車指定席は1万4720円だが、高速バスの場合、時期によって変動するものの、3000円程度で移動できる。ちなみに9月中の最安値を検索したところ、最低価格は3500円だった。

安眠とは程遠い高速バス

Googleでの検索回数がわかる「Googleトレンド」で見た「高速バス」の検索データ(画像:(C)Google)
Googleでの検索回数がわかる「Googleトレンド」で見た「高速バス」の検索データ(画像:(C)Google)

 とはいえ、どちらもが快適な移動手段とはいえない。車中泊の場合、自ら目的地まで運転した上に、車内で就寝しなければならない。もちろん、座席で快適な睡眠はとりにくい。車中泊を快適に過ごせる車種や関連グッズも多数発売されているが、準備段階で大枚をはたくはめになる。

 高速バスは安価だが、残念ながら「過酷」だ。最安値の場合、設備はあるものの、観光バスに毛が生えたような4列シートで、睡眠を十分とるには厳しい。少し高価な3列シートや、1万円くらいのハイグレードな座席を使った車両もあるが、筆者が経験した限り、3列シートやハイクラスの座席でも十分とは言い難かった。高速バスの座席でぐっすり眠れる人は、もはや特殊能力の持ち主といっても過言ではない。

 また、最近は格安航空会社(LCC)という手段もあるが、東京~大阪間の場合、たいていは成田空港~関西空港発着だ。両空港はアクセスに時間がかかるし、安さを求めると早朝や夜遅くの便になるため、利便性も十分とはいい難い。

 移動スピードや快適性を求めれば高価になり、安価を求めると、そのどちらも犠牲にしなくてはならないのが現実だ。それを解決する手段として、前述の夜行列車は望ましいのだ。