アルファードより「100万円高い」のになぜ売れる? 新型エルグランド先行受注8000台! 高級ミニバン市場で何が起きているのか
16年ぶりに刷新された日産エルグランドは、競合アルファードより約100万円高い価格設定ながら受注8000台を突破し、9割が上位仕様と好調だ。値引き依存からの脱却と残価設定ローンの活用による高付加価値化は、7500億円赤字の窮地にある日産が挑む構造改革『Re:Nissan』の成否を占う試金石となる。
価格競争を回避する高付加価値戦略

日産は2026年7月16日、エルグランドを16年ぶりにフルモデルチェンジした。価格はX e-4ORCEが689万7000円、G e-4ORCEが757万9000円だ。競合のアルファードと比較すると、エントリーモデル同士(HV G E-Four:581万9000円)では約108万円、上級モデル同士(HV Z E-Four:661万9800円)では約96万円の価格差がある。
あえて価格を下げなかった背景には、自動車市場において大量生産のみに依存する戦略が陥りやすいコモディティ化と不毛な価格競争を回避するという、極めて合理的な経営選択がある。日産はここで、差別化戦略を徹底したのだろう。
特にミニバンは、重心が高く走行安定性が低下しやすいという物理的な垂直的差別化における劣位性を抱えている。日産はこの弱点を、第3世代e-POWERと四輪制御技術e-4ORCE、インテリジェントダイナミックサスペンションによる走りの進化で克服した。
さらに14.3インチ統合ディスプレイやBOSE 22スピーカーなどがもたらすデジタル空間の居心地を融合させ、乗車体験全体の質を引き上げている。高度な電動化や制御技術を投入した高価格帯の仕様へ集中させる手法は、低粗利な量販競争から距離を置き、1台あたりの収益性を高めて開発費用を効率よく回収する製造業の持続的なサイクルを反映している。
価格引き下げによる量の追及を避け、約100万円高くても選ばれるプレミアムミニバンとしての価値を前面に押し出す商品戦略が、新型エルグランドの示す方向性である。