福井県知事が辞意――今後「北陸新幹線」はどう動くのか? 小浜vs米原ルート、政治・地域を揺さぶる分岐点とは

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北陸新幹線の延伸議論が揺れている。建設費2.1兆円の小浜・京都ルートに対し、米原案は6000億円と工期5年短縮が可能との試算もある。知事辞任、5万筆の反対署名、参院選の民意が交錯し、政治と合理性の綱引きは新段階に入った。

筆者の意見

敦賀市(画像:写真AC)
敦賀市(画像:写真AC)

 杉本知事は2024年3月の北陸新幹線県内開業(金沢~敦賀間延伸)を「100年に一度の好機」と位置づけ、政策を進めた。前述のとおり、北陸新幹線沿線10都府県で構成される建設促進同盟会の会長も務め、小浜・京都ルートの実現に向けて精力的に活動した人物である。

 北陸新幹線の延伸問題は、原子力政策とも関連して語られることがある。原発の運転開始から40年を超え、地域の均衡ある発展や観光・産業振興も考えれば、福井県や京都府が小浜線沿線の開発を求めるのは自然な流れだ。

 2016年時点の国のシミュレーションでは、小浜・京都ルートは約140kmの新設で建設費は約2兆1000億円。一方、敦賀から米原で東海道新幹線に接続するルートは、距離が短く建設費は1/3以下の約6000億円、工期も小浜経由より5年短い10年と試算されている。

 その後もさまざまな試算が行われ、2025年6月には北國新聞が京都大学名誉教授・中川大氏の試算を報じた。小浜・京都ルート、米原ルート、さらに湖西ルートを比較すると、距離や工期、建設費の面で「米原ルートが優位」であることが示されている。

 コストや工期、既存インフラの活用可能性を考えれば、現行「しらさぎ」を踏襲し米原接続とする方が合理的で、安全策としても現実的だ。近年、大学関係者もこの問題を注視している。

 従来、北陸エリアの学生は京都・大阪・神戸の大学に多く進学していた。しかし北陸新幹線の開通で東京へのアクセスが改善され、東京志向がさらに強まった。京阪神の大学では、閉鎖の可能性も含め経営状況の悪化が時折報じられる。大学側は大阪直結で学生流入減を食い止めたいと考えている。

 京都特有の課題として、仏教界の意向も無視できない。影響力が大きく、聞く耳を持たないわけにはいかない。加えて野党勢力の反発や調整コストも考慮すると、筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)としては米原ルートが「時間的リスクを抑えた最も現実的な選択肢」と判断する。この見解は交通研究者に多く見られる意見だ。

 一方で都市開発や地域開発の研究者は、国土強靭化や地域の均衡ある発展を重視する。日本海側の小浜線沿線エリアの観光振興や産業振興の可能性を評価し、小浜・京都ルートの魅力を指摘する声も根強い。

 しかし、筆者は米原ルートの推進を支持する。国土強靭化における東海道新幹線のバイパス機能確保、関西産業界・経済界の維持と発展、北陸と京阪神の相互アクセス、環境面の影響、時間的・費用的コストを総合的に勘案した結果である。

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