元日産ディーラーが明かす「ブラック企業」時代の記憶! 昭和的スパルタ指導の日々…これからは顧客本位、FP知識の時代だ
ディーラー業界での過酷な経験を経て、現在は金融業界で活躍する筆者が考える「もし車の販売現場に戻ったら」。顧客視点に立った営業手法を追求し、転職で得た知識を活かした提案で、営業成績を更新できる可能性を探る。新たなキャリアと視点が生む営業改革とは。
スパルタ教育から得た営業力
新卒で入社したディーラーは、当時から「ブラック企業」と呼ばれていた。不動産販売の父からも「厳しい業界だ」と忠告を受けていたが、それを承知の上で飛び込んだ。
新人営業マンとしてまず取り組んだのは、引き継ぎ顧客への対応だ。平日昼間の訪問活動に加え、夕方以降は電話での挨拶も欠かさなかった。挨拶だけでなく、点検整備や新車の案内なども行った。現代であればOJTやマニュアルによる指導が行われているだろうが、当時は
「先輩の背中を見ろ」
「何事も当たって砕けろ」
といったスパルタ教育が主流だった。
担当顧客が少ないにもかかわらず、連日上司から「電話しろ、手が止まっているぞ」と叱責を受けた。土日にはフェアの対応、翌日には新規顧客へのお礼訪問を行い、訪問時間が21時を過ぎることもあった。そのような時間帯に訪問していたため、今思えば警察に通報されるのではないかと不安に感じることもあった。
出社時間は朝7時、帰宅時間は23時を超えることもあり、上司が帰らない限り帰れないという悪しき慣習が存在していた。個人休が割り当てられても、上司から電話がかかってくることがあり、まともに休むことができなかった。
ネガティブな部分が多くなったが、もちろんやりがいを感じる場面も多かった。右も左も分からなかった若者が、数百万円の車を購入してもらう喜びは何物にも代えがたかった。車にトラブルが発生すると、真っ先に連絡をもらい、期待に応えようと勉強するきっかけにもなった。
新車商談時には「君だから契約するんだよ」といってもらえたこともあり、退職時にはわざわざショールームに会いに来てくれる顧客もいた。辛い4年間だったが、人間として成長できたと実感している。