鉄道は公共性が高いのに、なぜ「道路」より国のサポートがしょぼいのか? 予算格差の謎を考える

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道路は公共財と位置づけられ、税金で整備・維持されている。一方、鉄道は公共性が高いにもかかわらず、各社が自費で運営するのが当然とされてきた。これはなぜだろうか。

国の支出差異

ローカル線(画像:写真AC)
ローカル線(画像:写真AC)

 道路は公共財と位置づけられ、税金で整備・維持されている。それに対して鉄道は、公共性が高いにもかかわらず、各社が自費で運営するのが当然とされてきた。これはなぜだろうか。

 まず国からの支出の違いを見てみよう。道路と鉄道の維持・整備に対する国の支出を比較すると、その差は歴然としている。道路関係予算は手厚い財源によって支えられている一方で、鉄道に対する支出は極めて限定的だ。

 2023年度の国の予算を見ると、その構図がより明確になる。鉄道関係の予算は2556億8900万円であり、そのうち1940億円(76%)は整備新幹線整備事業に充てられている。つまり、都市や地方の鉄道の整備に使えるのは、残りの約600億円にすぎないのだ。これは、鉄道ネットワーク全体の維持・向上を図るには、あまりにも少ない。

 対して、同年度の道路関係予算は

「5兆2752億円」

で、鉄道関係予算の実に20倍以上に相当する。道路ネットワークの拡充や維持管理に、国が重点的に予算を配分していることが見て取れる。

 道路の維持・整備は、長年にわたって税金を主な財源として実施されてきた。国費や地方交付税が投入され、安定的な予算確保が図られてきたのだ。なかでも、2008(平成20)年まで存在した「道路特定財源制度」は、道路整備の象徴的な仕組みであった。

 この制度は、受益者負担の考え方に基づいて設計されていた。つまり、道路を利用する自動車の所有者や燃料を消費する者から直接的に税金を徴収し、その収入を道路の建設・維持費用に充てるというものだ。具体的には、

・ガソリン税
・自動車重量税

が整備され、道路整備の財源として活用された。

 道路特定財源制度は、道路整備を安定的に進めるために大きな役割を果たした。しかし、高度経済成長期を経て、道路ネットワークがある程度整備されたことを背景に、この制度の在り方を見直す議論が起こった。税収を道路整備に限定するのではなく、一般財源化して他の用途にも活用すべきだという意見が強まったのだ。

 こうした議論を受けて、道路特定財源制度は2008年度を最後に廃止された。それ以降は、道路整備の財源は一般財源から支出されることになったが、それでも道路予算は手厚く確保され続けている。この仕組みの変化は、道路整備の考え方に一定の影響を与えたものの、道路重視の姿勢は色濃く残っているのが現状だ。

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