リニア問題の記事が多過ぎる! よく分からない人のために「賛否両論」を整理する

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リニア中央新幹線をめぐる諸問題については、これまでにも多くの記事があるが、今回は賛否両論の全体像を整理してみたい。

賛否両論うずまくリニア問題

報道陣に公開されたリニア中央新幹線の改良型試験車。2023年3月2日午後撮影。山梨県都留市(画像:時事)
報道陣に公開されたリニア中央新幹線の改良型試験車。2023年3月2日午後撮影。山梨県都留市(画像:時事)

 リニア中央新幹線は2027年の開業を目指して工事が進められている。しかし、静岡県が「水問題」を理由に県内を貫通する南アルプストンネル(仮称)の静岡工区の着工を認めないことから、2027年の開業は現実的ではなくなり、JR東海は開業予定を2027年以降に改めることになった。

 リニア中央新幹線をめぐる諸問題については、これまでにも数多くの記事があるが、本稿ではリニアに対する賛否両論の全体像を整理してみたい。

建設の意義

山梨県立リニア見学センター(画像:写真AC)
山梨県立リニア見学センター(画像:写真AC)

 リニア中央新幹線は、2027年以降の品川~名古屋間の先行開業を目指し、JR東海が建設中だ。リニアとは超電導磁気浮上式リニアモーターカーを使用した磁気浮上式鉄道を指し、最高設計速度は時速505km。品川~名古屋間を

「最速40分」

で結ぶ予定だ。最終的には新大阪駅までの建設が計画されており、開業予定は最短で2037年。品川~新大阪間は最短67分で結ばれる。

 JR東海はリニア中央新幹線の建設意義について、東京~名古屋~大阪の三大都市圏を短時間で直結することでひと続きの巨大都市圏を誕生させ、日本の国際競争力を大きく向上させるための好機をもたらすこと。さらに、東海道新幹線の経年劣化が進んでいることや、大規模災害に対する抜本的な備えとして、リニア中央新幹線の早期実現を図ることで三大都市圏を結ぶ大動脈路線を2重系化しバックアップ路線とすることと説明している。

 さらに、リニア中央新幹線が実現すれば、東海道新幹線の「のぞみ」に該当する列車は、リニア中央新幹線に移ることになり、停車駅の多い「ひかり」「こだま」の運行が主体となることから、

「これまでのぞみの通過していた駅に停車する新幹線が増え、そうした駅での利用機会の向上や東海道新幹線の沿線の活性化に寄与できる」

というものである。

 なお、のぞみについては、東京~新大阪間の停車駅は、品川、新横浜、名古屋、京都に絞られており、この間にある

・静岡県(熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松)
・岐阜県(岐阜羽島)
・滋賀県(米原)

の駅には停車していない。

 なお、品川~名古屋間のリニア中央新幹線の総事業費は、2021年4月に当初の計画の5.5兆円から1.5兆円増え

「7兆円」

になることが発表されている。このとき公開された資料によれば、JR東海の2027年以降の長期債務残高は約6兆円に達し、そうした状況が数年間続くということになる。しかし、JR東海は、過去の長期債務の返済実績から

「6兆円程度であれば会社として十分に耐えられる」

という考えを示している。

 JR東海が運行する東海道新幹線は国鉄分割民営化によりJR東海は発足した1987(昭和62)年当時は新幹線保有機構の所有でJR東海はこれを借り受けて運行していた。しかし、JR東海は1991(平成3)年に東海道新幹線に関わる鉄道施設を約5兆円で買い取った。これにより約5.4兆円の長期債務を抱えることになったが、東海道新幹線のもたらす旅客収入で年間約1400億円ずつ返済を続け2015年度には長期債務残高は2兆円を切った。

 さらに、東海道新幹線を買い取った1991年度の営業利益(単体)は2876億円だったのに対して、コロナ前の2018年度は6677億円に増加。こうしたことから、JR東海は、

「東海道新幹線を買い取った当時よりも会社の経営体力が強くなっている」

ことから6兆円程度の長期債務には十分に耐えられるという考えを持っている。

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