なぜ都会人は、毎朝わざわざ「ストレス満載の電車」に身を委ねるのか?

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早朝の満員電車、乗車率150%の車内で91.6%がイライラを経験。動かない人やスペース確保の心理が生む混雑は、都市設計と秩序の産物でもあり、通勤の不快と社会のリズムを映す鏡となる。

無言の共同体

「リモートワークで退職を思いとどまった理由」全国20~65歳のリモート経験者1005人にインターネットで実施(画像:ラシック)
「リモートワークで退職を思いとどまった理由」全国20~65歳のリモート経験者1005人にインターネットで実施(画像:ラシック)

 電車のなかでは、誰もが互いの存在を意識しつつ、見ないふりをしている。目を合わせず、声を交わさず、それぞれの身体が流れの一部として動く。だが、その沈黙の背後には、かすかな協調が隠れている。

 ドアが開き、人が乗り降りする瞬間、自然に生まれる小さな流れ。降りる人のために一歩下がる、そのわずかな間合いが、無言の合意を形づくる。押し合わず、怒鳴らず、しかし列は乱れずに進む。言葉を交わさずとも、社会の秩序は静かに守られている。

 不安障害を専門に治療を行う「こころサポートクリニック」の院長・平山貴敏氏はいう。

「人は期待が裏切られると怒りやイライラを感じやすくなります。電車に乗る時は周囲に対する期待値を下げておくのもイラっとしない工夫のひとつです」(ビズヒッツ「電車通勤中にイラッとする人に関する意識調査」2025年6月20日発表)

と。期待を下げることは、互いを許す、現実的な知恵のひとつでもある。

 この静かな共同体は、言葉にならない連帯を育む場でもある。誰も声を荒げないからこそ、互いの存在を感じながら、都市という巨大な身体の動きに加わることができるのかもしれない。

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