中国の「気候変動対策」が日本を圧倒する4つの理由 歴史認識と政策が生み出すギャップとは?

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気候変動による異常気象や資源の変動が深刻化するなかで、中国は脱炭素化を進め、電気自動車や太陽光発電への投資を強化している。中国には、過去の王朝交代が気候変動に関連していたという歴史的背景があり、それが現在の積極的な対策に影響を与えているのではないか。一方、日本は気候対策に慎重であり、この違いは歴史的な認識にも関係している。

知識人への影響力

中国(画像:Pexels)
中国(画像:Pexels)

 殷は気象変動の結果として滅びた。そういってよい。滅亡の直接的な原因は奴隷制度の悪弊や王権と貴族権益の衝突、外征、周辺国の崛起(くっき)で説明される。ただ、背景には社会矛盾の激化がある。気象変動で生じた農業不振以下の経済条件が悪化した結果もみなせるからである。

 なお、気象変動による王朝交代は殷にとどまらない。政治混乱期の多くは気象変動期と重なる。モンゴル台頭から元朝の成立も気象の影響といわれている。

 これも中国で気象変動対策が進む理由ではないか。王朝交代を引き起こすほどの影響力を持つ。そのような歴史認識は知識人層に響く。国民世論の形成や、指導者層に影響を持つ階層を動かすのである。

 さらに日本で進まない要因でもある。日本世論や政治と知識人の関係は弱い。その発言が世論を作り、政治の方向性を規定することも少ない。特に気象変動に警鐘を鳴らす気象学や動植物学、農学の影響力は弱く、歴史学となると皆無である。これもまた中国に遅れる一原因なのだろう。

*1 晁根池「論商朝晩期気候変冷対商周王朝更替的影響」『中学地理教学参考』2018年6期下,pp.66-68.

*2 楊謙,詹森楊「商代晩期気候変遷与祀井儀式発生 – 基于水井水位線的分析」『華夏考古』2022年5期,pp.68-77.

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