トラック運転手の「待遇改善」は可能か? サービス労働が跋扈する物流業界、荷役作業からの解放目指せ
荷主都合で長時間待たされるケースも
そこで国の基準では、休憩時間を含む始業時間から終業時間の合計である「拘束時間」という概念を導入し、1日の拘束時間を13時間、最大16時間と定めている。
休憩時間を含んでいるために一般の労働者との単純な比較はできないが、一般労働者が月45時間の残業を行った場合の労働時間である1日10時間に比べ、トラックドライバーの拘束時間は1日3時間、最大で6時間も長い。その上、この基準は「告示」にとどまっているために強制力がなく、この基準さえも守られていないケースが多い。
本書では、実際のトラックドライバーの働き方も紹介されているが、休憩時間は4時間ごとに30分と設定されているものの、休憩できる場所がない、荷物の到着が遅れる延着が許されないといったことから、この規定を守る運行は難しいという。
また、2003(平成15)年から事故防止のために時速90km以上を出せないようにするスピードリミッターの装着が義務付けられ、運行記録計(タコグラフ)装着の義務も広まっていることから、スピードを出すことで遅れを取り戻すことは難しく、これも休憩時間が削られる要因となっている。
荷物の積み込みや積み卸し(荷役)までがドライバーの仕事とされることも多く、これも大きな負担となっている。この荷役はパレットを使うことで機械化できるが、パレットを使うと積載効率が下がることもあり、その普及は進んでいない。
さらに、荷役だけでなく
・仕分け
・棚入れ
・ラベル貼り
・商品陳列
といったことまでが求められることもあり、ドライバーは「サービス労働」を強いられている。
賃金が支払われないという点では手待ち時間も同じである。延着は許されないが、早めに着いたからといって荷物を置いてこられるわけではなく、荷主の都合で長時間待たされることもある。本書では
「半日待たされた末に「明日、もう一回来て」と言われたこともある」(69ページ)
とのドライバーの声も紹介している。
結果として、長距離運行ドライバーの一運行あたりの平均拘束時間は16時間43分と、平均ですでに基準を上回っており、16時間を超えた運行を行っている長距離運行ドライバーの割合は43.1%に達する。