鉄道運賃、さらなる追加値上げも? 国交省が進める「制度改正」議論とは何か

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東急やJR東、東京メトロなど、各鉄道事業者が2023年3月からの運賃値上げを国道交通省に申請した。国は「鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会」を設け、運賃の仕組み見直しを検討し始めている。

30年以上変わらなかった運賃

ホームドア(画像:写真AC)
ホームドア(画像:写真AC)

 そもそも日本では、鉄道運賃が長らく据え置かれていた。

たとえばJR本州3社は、1987(昭和62)年に発足して以来、消費税増税の影響によるものを除き、30年以上も運賃を変えていない。その間に消費者物価が上昇したにもかかわらずだ。

この背景には、後述する硬直的な制度があり、鉄道事業者が容易に運賃を値上げできない仕組みがあることが関係している。

 この30年以上の間に、鉄道のバリアフリー対策や防犯対策が求められるようになり、鉄道事業者の負担は増えていた。バリアフリー対策には、エスカレーターやエレベーター、ホームドアの設置がある。防犯対策には、駅や車内の監視カメラの設置や、緊急通報ボタンの増設などがある。

 一方、鉄道事業者は、今後進む人口減少への対応も進めていた。人口が減れば、鉄道を使う利用者の数だけでなく、鉄道を支える労働者の数も減ってしまい、鉄道の運営や維持が困難になる。そうなる日が数十年後に来ることを想定して、より少ない労働者で鉄道を支える仕組みを少しずつ構築していたのだ。

 ところが、その日は突然やって来た。2020年に世界が新型コロナ禍に突入し、日本の鉄道利用者数は前年の半分程度まで落ち込んだ。その後は徐々に回復したものの、現時点ではコロナ禍前の7割程度までしか戻っていない。

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