嵐・BTS・ガルパンがお手本? エンタメが変える、コロナ後の新たな「移動概念」とは

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コロナ後、自粛されてきた「移動」はどう変化していくのか。エンタメコンテンツを通して考えた。

従来の観光との相違点

従来の観光イメージ(画像:写真AC)
従来の観光イメージ(画像:写真AC)

 コンテンツツーリズムに社会的関心が向けられるようになったのは、いくつかの要因がある。まず第一に、

「経済的効果が期待できる」

からだ。

 例えば、2018年まで行われていたAKB48グループの選抜総選挙では、姉妹グループの活動拠点で開票イベントが開催されており、

・2015年(第7回、福岡県):約17億8000万円
・2016年(第8回、新潟県):約24億円
・2018年(第10回、愛知県):約27億3000万円

と、1日で多大なる経済効果を生み出している。

 こうしたアイドル(人)によるファンツーリズムは国内だけではなく、海外に住む日本のアイドルファンの間にも存在する。これは従来、インバウンド(訪日外国人)増加の一端を担うものと目されていた。

 コンテンツツーリズムに社会的関心が向けられるようになった第二の要因は、

「これまでの観光と異なる部分があった」

からだ。

 旅行会社や宿泊業者、自治体が先導し、パッケージ化されたマスツーリズムと比べ、コンテンツツーリズムはファンの能動的な関わり方に焦点が当てられがちだ。

 特に2次元コンテンツでは、舞台となった場所が

・明示されていない
・観光地化されていない

こともあり、作中の商店街や学校、喫茶店、神社といった何の変哲もない現地の風景に、ファンが手がかりを見つけ、訪れた先でのふるまいに聖地を見いだしていくことは、主体性を感じさせる。このような点は、歴史上の人物やゆかりの場所を利用した大河ドラマの観光誘致とは全く異なる。

 加えて、「双方向性」もキーワードになる。

 一般的に観光地の情報は、事業者や地域側が発信してきた。かたや聖地巡礼はファンが巡礼した際の様子を「巡礼記」としてブログにつづったり、動画サイトやSNSにアップロードしたりと、巡礼側からの積極的な情報発信が特徴だ。

 そして、それを情報源や巡礼のきっかけにして、新たな巡礼者が生み出される。同時に、巡礼の心がけやマナーといった注意事項も記され、当事者間で共有される。そこには、マスツーリズムが抱えてきた「観光公害」に自覚的であろうとする者たちも見受けられる。

 そして地域住民と関わりを持つうちに、「作品のファン」から

「地域のファン」

へと移行し、客観的な立場から地域の魅力を発見することで、地域住民とともに聖地をより良く作り上げようと試みる巡礼者も出てくる。

 つまり、従来の「ホストからゲストへ」という一方的な流れから、

・ゲスト同士
・ゲストからホストへ

という双方向な流れに転換することで、ウィンウィン(win-win)の関係性が築かれるということだ。ここにはSNSの発展が深く影響している。

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