「もう怒りしかない」なぜ宅配の荷物は投げられたのか? ネットで話題! 置き配が“投げ配”に変わる衝撃、50億個の物流を支える構造と歪みとは
置き配が市民権を得る一方で、“投げ配”の実態がSNSで波紋を広げている。背景には、年間50億個超の宅配物量と評価制度に縛られた現場の疲弊がある。丁寧さが「コスト」と見なされる時代に、物流の当たり前を問い直す必要がある。
50億個時代の物流現場

なぜ配達品質がここまで軽視されるようになったのか。その背景には、物流業界が突きつけられている「スピード重視」という大義がある。
通販利用者の増加により、1日に配達される荷物の総量はかつてない規模に膨れ上がっている。2023年度の宅配便取扱個数は
「50億733万個」
前年比で約0.3%増加した。うちトラック運送が49億1401万個を占める。上位3便(宅急便・飛脚宅配便・ゆうパック)で全体の約95%を占めている。航空系は4便で約20.9%を構成する。一方、メール便の取扱冊数は36億1008万冊。前年比で10.5%減少した。「ゆうメール」と「クロネコDM便」の2便で約97%を占めている(国土交通省2024年8月発表)。
そんななか、都市部では配達員が1日150~200個の荷物を配ることも珍しくない。1件あたりに使える時間はわずか数分。効率を追求すればするほど、早く運ぶ、多く運ぶことが優先される。その結果、運べていればよという共通認識が現場を支配するようになる。
時間通りに届ける、不在時でも確実に届けるという使命感は、いつしか
「配送品質より量とスピード」
という評価軸に変わっていった。“投げ配”はその極端な象徴といえる。非対面配達は双方にとって効率的だが、そのぶん荷物の扱いへの注意が薄れるリスクも抱えている。