中国には「幽霊空港」が存在した! 異常事態… 365空港、日本とも共通する無駄なインフラの背景と末路とは

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中国の急速なインフラ整備が引き起こした「幽霊空港」問題。365の空港のうち、利用者が極端に少ない空港が増加し、過剰な施設整備が地方経済に及ぼす影響が顕在化。規制と政府の過度な振興策が、航空業界に新たな課題を突きつけている。

規制が阻む中国の航空市場

 読者のなかには、

「中国は日本より広く、人口も多いから、航空需要が高く、空港がたくさん作られるのは問題ないのでは」

と思う人もいるかもしれない。確かに、中国の民間航空の需要は非常に大きい。2023年の空港旅客数は12億5977万人で、世界でも米国に次ぐ規模だ。しかし、この数字は2023年時点で延べ36億8000万人に達する中国の鉄道旅客輸送量の約3分の1に過ぎない。この比較を見て、中国の国土と人口に対して少ないと感じる人もいるだろう。

 中国は世界最大の高速鉄道網を持っているが、国土の広さを考えると鉄道が優位性を保つのは難しい。例えば、北京と上海の間は約1300kmあり、高速鉄道でも最速で4時間40分かかる。北京と広州の間は2300km近くあり、所要時間は平均7時間を超える。

 では、そんな状況にもかかわらず航空需要は低いままなのだろうか。その理由のひとつとして、筆者(前林広樹、航空ライター)は中国政府の航空業界に対する厳しい規制が影響していると考える。北京や上海は航空自由化の対象にならないことが多く、空域の大部分が軍に抑えられているため、航空会社が運航できる場所は限られている。そのため、運航の柔軟な設定が難しく、格安航空会社(LCC)の新規参入も厳しい。

 中国では所得格差が大きいため、飛行機に乗ったことのない人が多い地方ではLCC市場を拡大できるチャンスがある。しかし、中国国内線におけるLCCのシェアは2018年時点でわずか10%に過ぎない。この数字は世界平均の33%の3分の1未満であり、日本の国内線(17%)よりも低い。LCCのシェアが低いと、人々が飛行機を選ぶ機会が少なくなる。

 また、少人数の富裕層が利用するビジネスジェットは空港にとって高収益な市場だが、中国政府の規制により市場拡大には限界がある。航空会社や軍は拠点を集約しがちで、多くの空港は十分に活用されない。米国のように企業経営者や投資家が自家用機を利用することで多くの空港が活用されるが、中国ではそれが期待できない。このため、空港経営に悪影響が出るのは避けられない。

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