物流危機 「2024年問題」は序章に過ぎなかった! 2025年以降も深刻化必至? 9万トン規制、CLO選任…荷主が変わらなければ――の現実
サプライチェーン全体を最適化することの重要性

では、なぜ新物効法でCLOの選任が義務付けられることになったのか。それは、サプライチェーン全体の最適化が十分に追求できていないことが物流の効率化を妨げていると認識されたからだ。実際、筆者(小野塚征志、戦略コンサルタント)のコンサルティング経験でもサプライチェーンの全体最適が課題となった例は多い。
例えば、筆者がコスト構造改革を支援した機械メーカーのA社は、X工場で部品を加工し、Y工場で組み立てた後、納品先に出荷していた。このX工場からY工場へのトラック輸送は1日3回行われていた。輸送の頻度が高ければその分だけ工場内の在庫を減らせるからだ。これはトヨタ式の「ジャスト・イン・タイム」を徹底した結果である。
しかし、国内生産はピーク時よりも大きく減少しており、X工場からY工場に向かうトラックの積載率は常に30%を下回っていた。つまり、積載率が30%にも満たないトラックを1日に3回も走らせていたのだ。
筆者が指摘した結果、A社は1日1回に変更することで、トラック輸送のコストを半分以下に削減した。もちろん、輸送頻度を下げたため工場内の在庫は増えたが、余剰スペースがあったため追加の費用は生じなかった。
こう書くと、読者は「なぜA社はこの問題に気づかなかったのか」と思うかもしれない。A社の工場からすると、トラック輸送は物流部門で計上されるコストであり、在庫を増やさないことが重要だった。対して、物流部門は積載率が30%に満たないことを認識していたが、1日3回の輸送は工場からの指示であり、その範囲内で改善活動を行うしかないと考えていた。そして、経営者は改善活動を徹底させた結果、効率化が進んだと錯覚していた。
また、チラシやポスターの制作を主とする印刷会社のB社は、「朝一での納品」を基本としていた。B社の営業マンは「得意先が朝一での納品を求めているから」といっていた。これにより、明け方から20台ほどのトラックが動き出し、昼前には戻ってくる。大半のトラックは午前中の数時間しか稼働していなかった。
筆者は、このB社の得意先に本当に朝一での納品が必要なのかと聞いてみた。すると、大多数の得意先は「B社の営業マンが“朝一に納品します”というから、お願いしますと答えていたが、別に朝一に持ってきてもらう必要はない」といった。結局、「朝一での納品」は営業マンの決まり文句に過ぎなかったのだ。
B社は、このマインドを改めるため、朝一での納品が不要な案件を獲得するとボーナスが増えるルールを導入した。結果として、営業マンは「時間指定のない納品」を提案し、午後もトラックを活用できるようになった。これにより、必要なトラックの台数は半減し、ボーナスの増加分をはるかに上回るコスト削減効果が得られた。