大河ドラマ「べらぼう」で吉原が観光地化？ 遊女、娼婦、芸者…「美化された歴史」の裏で聞こえる骨肉の叫び、「脱色」観光の危険性を考える
NHK大河ドラマ『べらぼう ～蔦重栄華乃夢噺～』の放送が話題となるなか、吉原を巡る観光施設や地域振興の動きが加速している。しかし、その華やかさの背後にある複雑な歴史や現代の観光開発との矛盾が浮き彫りになり、歴史理解を深めるための課題が顕在化している。
日本橋から浅草寺北に移転した歴史
江戸幕府が開設された1617（元和3）年、遊廓が日本橋葺屋町（現・日本橋人形町）に許可され、吉原遊廓が誕生した。当初、駿府に存在した公娼制度を移転したものだった。1657（明暦3）年の大火後、浅草寺北の日本堤付近に移転し、「新吉原」と呼ばれるようになった。
新吉原には多くの遊女が存在し、花魁、新造、禿など身分による格差があった。大店では文化人や大名が集まる社交の場ともなった。遊女には高い教養が求められ、初回の訪問では寝ることなく、何度も通うことで馴染みになるという慣習があった。遊客の多くは武士や町人で、特に町人が中心となり、豪遊を楽しむことが多かった。
吉原はしばしば大火に見舞われ、そのたびに再建が行われた。江戸時代後期には、他の宿場町からの増員が許可され、さらに発展を遂げた。1872（明治5）年に遊女の人身売買の規制などを目的とした「芸娼妓解放令」が発令され、遊女屋は「貸座敷」と改名されたが、人身売買は依然として続いていた。吉原の風俗は、当時の文学作品にも描かれることがあった。
吉原は大火、関東大震災（1923年）、東京大空襲（1945年）などで何度も焼失し、再建が繰り返された。しかし、戦後、GHQの指導により公娼制度が廃止され、その後、赤線地帯（売春が合法的に行われていたエリア）に変わった。最終的には、1958（昭和33）年に施行された「売春防止法」により売春が違法となり、赤線地帯は廃止された。