バスも鉄道も存続危機! でも「ローカル路線」の話題がイマイチ盛り上がらないワケ

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非常に根深いローカル路線の維持問題。地元住民の運命や、いかに。

都市部の収入で維持されるローカル線

東京都渋谷区にあるJR東日本本社ビル(画像:(C)Google)
東京都渋谷区にあるJR東日本本社ビル(画像:(C)Google)

 以下は、JR東日本の2021年3月期決算における鉄道収入の内訳だ。カッコ内は鉄道収入全体に占める割合。関東圏は、東京・横浜・八王子・大宮・高崎・水戸・千葉支社管内を、その他は仙台・盛岡・秋田・新潟・長野支社管内を示している。

・新幹線:1896億円(20%)
・在来線(関東圏):7265億円(76%)
・在来線(その他):380億円(4%)
・合計:9543億円

 鉄道収入において、在来線(その他)が占める割合はJR東日本でわずか4%にすぎない。仙台エリアなど、一部地方都市エリアに限定すれば、収支が均衡している区間もあるかもしれない。しかし会社全体で見ると、都市部における収入で地方のローカル路線を維持している構造には変わりない。

鉄道のネットワーク機能は生かされている?

備北地区の玄関口となる三次駅(画像:(C)Google)
備北地区の玄関口となる三次駅(画像:(C)Google)

 鉄道には大きく分けてふたつの側面がある。

 まずひとつ目は、その地域に生活する住民の足としての機能である。通勤や通学のほか、日常生活での用事での使用が当てはまる。そしてもうひとつが、都市部から地方に到達できるネットワーク機能である。

 ネットワーク機能の例としては、観光や旅行での移動が挙げられる。では、どのくらいの割合で鉄道のネットワーク機能は利用されているのだろうか。

 参考として、広島県が作成した、2017年の広島県観光客数の動向調査における「交通機関別観光客数の状況」を見てみよう。なお、カッコ内は合計に占める割合を示す。

●広島県(全体)
・鉄道:1457万6000人(20.9%)
・バス:721万1000人(10.3%)
・船舶:687万6000人(9.8%)
・航空機:50万3000人(0.7%)
・自家用車:3800万8000人(54.4%)
・その他:272万人(3.9%)
・合計:6989万4000人

●備北地区(三次市、庄原市)
・鉄道:3万4000人(0.6%)
・バス:67万1000人(11.1%)
・自家用車:526万9000人(87.2%)
・その他:6万9000人(1.1%)
・合計:604万3000人

 広島県を訪れる観光客の利用交通機関は、自家用車が54.4%と最も多く、次いで鉄道20.9%、バス10.3%となっている。しかしながら、広島県備北地区に限定すると、自家用車が87.2%と圧倒的に多くなり、鉄道はわずか0.6%にすぎなくなる。

 広島県備北地区は、中国山地を含んだ広島県の北部に位置している。その玄関口となる三次駅は、広島駅から芸備線の快速列車でおよそ1時間20分の距離にある。広島県のデータを見る限り、広島県には約2割の観光客が鉄道を利用して来るものの、そこから先の芸備線は、ネットワークとして利用されていないことがわかる。

 これは、広島県備北地区における観光地やスキー場などが、鉄道駅から離れたところにあることに起因しているからだろう。この傾向は広島県に限らず、最寄り駅からの移動の不便さや乗り換えの手間を敬遠されやすい地方ほど、顕著になっている。

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