夜行列車の復活は「銀河モデル」にアリ? 昼夜兼用タイプがカギ? 高乗車率95%のワケ、多様性時代の鉄道戦略を考える【連載】夜行列車現実論(7)

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夜行列車の復活に向けた議論は続くなか、JR西日本の「WEST EXPRESS銀河」が示す成功事例が注目されている。モジュール性の高い車両デザインや、観光需要に応じた柔軟な運行は、需要の再生可能性を証明。2024年9月には和歌山県紀南コースの運行を終え、乗車率95%を記録するなど、夜行列車の未来に一筋の光を灯す。

価格と柔軟性で差別化したサービス

WEST EXPRESS銀河のプレミアルーム(画像:JR西日本)
WEST EXPRESS銀河のプレミアルーム(画像:JR西日本)

 WEST EXPRESS銀河は、さまざまなニーズに応じたユニークな座席配置で注目される。

 グリーン個室「プレミアルーム」は、プライバシーを確保できる個室で、複数名用が4室、ひとり用が1室の計5室が設けられている。車窓を楽しめる座席は斜めに配置されており、可動式の背もたれを倒せば、ベッドのように休むことも可能だ。観光はもちろん、テレワークの利用にも対応できる仕様になっており、仕事中の息抜きにも便利である。

 グリーン車指定席の「ファーストシート」は、向かい合う2席がひとつのボックスに配置され、大型の折り畳み式テーブルが設置されている。夜行運行時には、可動式の背もたれを倒してベッドに変えることができ、ビジネスやひとり旅など多様な需要に対応している。

 普通車指定席「クシェット」は、横になって寛げる座席で、ひとつのボックスに上下2段の計4席が設置されており、グループでの利用に適している。特に若者向けの旅行を視野に入れた内装が特徴である。

「ファミリーキャビン」は約5平方メートルの半個室に大きなベンチシートが設置されており、シートはマットレスのようになっているため寝転がることができる。名前のとおり、子ども連れにも配慮した設計となっている。

 これらの特徴的な座席に加え、通常のリクライニングシートも提供されており、リクライニング角度が深く、快適に過ごせる。さらにフリースペースも確保されており、観光やビジネスの両方で利用者が体を解放できるよう工夫されている。

 筆者自身がこの車両を体験した際、観光用途とビジネス用途に柔軟に対応できる構成に驚いた。運賃は京都から出雲市まで、プレミアルームが8400円の追加料金を含む一方、グリーン車指定席は5400円、普通車指定席は3490円と比較的リーズナブルである。

 この価格体系は、ビジネスにも観光にもアドバンテージを提供しており、TPOやアクティビティに応じた柔軟なインテリアと運賃体系の組み合わせが、改めて注目に値するポイントである。

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