映画『ドライブ・マイ・カー』に登場 往年の名車「サーブ900」が物語るクルマ社会“一つの終焉”

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濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した。物語の中心的役割を担う「クルマ」の描かれ方に、過去から現代、未来へと移ろう人々と車の関係を見て取ることができる。

日本での外国車人気、ピークは1996年

映画『ドライブ・マイ・カー』(画像:(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)
映画『ドライブ・マイ・カー』(画像:(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)

 本作の主人公である舞台俳優・演出家の家福悠介の愛車「サーブ900」こそ、本作の焦点となるクルマである。

 近年、外国車は多く見掛けるようになり、珍しい存在ではなくなった。実際、バブル期には「外車ブーム」と言われたが、外国車の販売比率は1990(平成2)年までは5%に満たなかった。

 1990年代以降、外国車の新規登録台数(乗用・貨物・バス計)は増え、1996年に輸入車新規登録台数が42万7525台に達しピークを迎える。2012年以降、同登録台数は30万台を超え続け、2014年以降は販売比率が10%を超えるようになった(日本自動車輸入協会)。

 その中心はメルセデス、BMW、フォルクスワーゲン、アウディなどのドイツ車である。

 外国車がかつてほど珍しくなくなった現在にあっても「サーブ900」が目を引くのは、もとはスウェーデンの航空機メーカーが製造・販売していたクルマであり、また外国車比率が高まった時期にブランドが消滅したためだろう。

 サーブの自動車部門であったサーブ・オートモービルは1990年にGM傘下に入り、その後、さまざまな企業を渡り歩いた末、消滅する。1992年以降、二代目のサーブ900がGM傘下で販売されたが、本作で用いられているのは1978(昭和53)年~1993(平成3)年に販売されていた初代サーブ900である。「クラシック・サーブ」や「オリジナル・サーブ」と呼ばれることもある。

 輸入車台数がピークを迎える以前、そして輸入車販売比率10%を超えるはるか以前、輸入車が希少性の高い嗜好品として「外車」と呼ばれ、輝いていた時代に販売されていたクルマといえる。

 現在では、SUWやコンパクトカーなどのシェアが伸び、丸みを帯びた外形と鋭角なヘッドライトのクルマをよく見かける。そうしたクルマとの対比でみると、湾曲したフロントガラスが切りたち、そこから伸びる長めのノーズとスクウェアな外形とヘッドライトのデザインは、懐かしさを感じさせる。

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