佐渡島と新潟の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
架橋の実現と課題

佐渡島は現在、企業誘致に積極的に取り組んでいる島であり、その成果は注目に値する。佐渡市は「起業成功率ナンバーワンの島」を掲げ、2017年から2023年にかけて、IT企業を中心に48社を島外から誘致することに成功した。そのなかには、島内にデータセンターを設置した企業も含まれている。これだけでも、佐渡が経済的に魅力的な場所であることを示している。
現在のところ、佐渡島への企業進出には地理的な制約があるため、限界が存在する。しかし、架橋が実現すれば、これまで物流コストが障壁となり進出を見送っていた企業が、佐渡島への進出を検討する動きが加速するだろう。特に、自然環境を活かしたワーケーション施設や、IT企業のサテライトオフィスといった業態には、大きな誘致効果が期待できる。
とはいえ、架橋実現には大きな課題も存在する。最大の問題は
「建設コスト」
だ。佐渡と本土の距離は最短で約32km。現存する世界最長の海上橋で、香港・珠海・マカオを結ぶ港珠澳大橋(55km)の約60%に当たる長さだ。港珠澳大橋が湾内にあるのに対し、佐渡と本土の間には日本海が広がっており、技術的な困難が予想される。
また、建設コストに見合う収益が得られるか疑問だ。1kmあたり300億円として試算すると、総工費は約1兆円規模となる。これは新潟県の年間予算に迫る規模であり、完成後も年間数百億円の維持管理費が必要になる。
通行料を片道5000円と設定しても、現在の年間利用者数(25万人)では年間収入は25億円にしかならない。維持管理費をカバーするためには利用者数の大幅な増加が求められるが、佐渡島の人口減少が予想されるなか、観光客の増加に頼るしかない。しかし、その増加幅も現実的には見込みづらい。
このように、架橋は現実的な選択肢としては難しいかもしれないが、佐渡島の発展のためには、他の方法で新たな経済活動を促進する必要があるだろう。