佐渡島と新潟の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
佐渡島と本土を繋ぐ架橋計画は可能? 交通・観光・産業における革新が期待される一方、約1兆円の建設コストという厳しい現実が立ちはだかる。32kmの架橋がもたらす経済的効果と課題を徹底分析。
航路利用者25万人に激減

佐渡観光交流機構の分析によると、観光業の低迷には以下のような要因がある。
・団体旅行から個人やグループ旅行への変化に十分に対応できていない
・海路に頼らざるを得ない佐渡観光において、距離によるハンディを克服するような特色を打ち出せていない
佐渡金山は世界遺産に登録され、観光スポットとしての期待を集めているが、多くの観光客は一泊二日程度の短期滞在であることが明らかとなっている。このため、観光業は佐渡の経済を支える主要産業にはなり得ていない。
人口減少と産業縮小の進行は、佐渡島と本土との結びつきにも影響を与えている。現在、佐渡島と本土を結ぶ航路は新潟両津航路(カーフェリーとジェットフォイル)と直江津小木航路(カーフェリー)のふたつだが、これらの航路利用者数は1994(平成6)年に年間114万4213人を記録したものの、2020年には25万4133人へと激減した。特に、新潟県内からの利用者数は1994年の32万4497人から2020年には15万8486人にまで減少しており、これは佐渡島と本土との日常的な交流が希薄化していることを示している。
利用者数の減少は、航路の維持にも深刻な影響を及ぼしている。直江津小木航路では2003年にジェットフォイルが廃止され、2008年以降は冬季の運休も実施されている。運航を担う佐渡汽船は自治体からの支援を受けながら航路を維持してきたが、コロナ禍による輸送量の激減が追い打ちをかけ、2021年12月期には約22億円の債務超過に陥った。
この経営危機を受け、佐渡汽船は2022年に地方交通再生の実績を持つみちのりホールディングスの子会社となり、同社からの15億円の出資と、第四北越銀行からの金融支援を受けることとなった。