佐渡島と新潟の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?

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佐渡島と本土を繋ぐ架橋計画は可能? 交通・観光・産業における革新が期待される一方、約1兆円の建設コストという厳しい現実が立ちはだかる。32kmの架橋がもたらす経済的効果と課題を徹底分析。

産業縮小が加速する島内経済

ジェットフォイル(画像:写真AC)
ジェットフォイル(画像:写真AC)

 しかし、この国道指定が佐渡島の発展に直接貢献したわけではない。1960年(昭和35年)に11万3296人だった佐渡島の人口は、現在では4万9336人まで減少している。つまり、60年間で島の人口はほぼ半減したことになる。

 男女別の人口推移にも特徴的な傾向がある。1960年には男性が5万3194人だったが、2024年には2万4040人まで減少した。一方、女性は6万102人から2万5296人へと増加している。女性の人口は常に男性を上回り、男性の減少率が女性よりも高い。この傾向は、島の産業の状況と深く関係している。

 佐渡市の統計によると、産業別就業人口は以下のように推移している。

 1980年のデータでは、第一産業が1万8361人(37.7%)、第二産業が9605人(19.8%)、第三産業が2万694人(42.5%)を占めていた。しかし、2015(平成27)年には第一産業が5862人(20.2%)、第二産業が4885人(16.8%)、第三産業が1万8248人(62.7%)に変化している。

 特に注目すべきは、男性が主に従事していた第一産業と第二産業の縮小だ。このふたつの産業の就業者比率は、1980年の57.5%から2015年には37%にまで低下した。なかでも、第二産業(建設・製造業)の衰退により、男性の雇用機会が大きく失われ、その結果、男性の島外流出が進んだと考えられる。

 さらに、佐渡島では第二産業の回復が容易ではない。離島という地理的な条件から、原材料の調達や製品の輸送コストが本土よりも高く、島外からの企業誘致も進まない。加えて、人口減少により島内需要も縮小し、悪循環に陥っている。

 観光産業も当初の期待に見合った効果を上げていない。観光客数は1994年の年間約114万4000人をピークに減少を続け、2019年には約49万8000人と、ピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。

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