佐渡島と新潟の「この場所」に、なぜ橋を作らないのか?
佐渡島と本土を繋ぐ架橋計画は可能? 交通・観光・産業における革新が期待される一方、約1兆円の建設コストという厳しい現実が立ちはだかる。32kmの架橋がもたらす経済的効果と課題を徹底分析。
斬新なアイデアで誕生した国道350号

佐渡島の交通状況を見てみると、本土と佐渡島を結ぶ航路は
・新潟両津航路
・直江津小木航路
のふたつある。これら航路は「海上国道」として、国道350号に指定されている。
国道350号は新潟市から佐渡島を経由して上越市に至る道路で、そのうち約145kmが海上区間だ。海上国道は東京湾口を横断する国道16号などと同様に全国に存在するが、本土から島へ迂回する経路を持つ国道350号は、少々特異な存在といえる。
この国道指定には興味深い背景がある。1967(昭和42)年、新潟両津航路にカーフェリーが就航し、好景気の影響もあって観光客が増加した。しかし当時、島内の道路事情は劣悪で、主要ルートである両津~小木間はすれ違いもままならない砂利道の県道に過ぎなかった。
地元からの陳情を受け、1974年に国道350号が設置された。ふたつの航路を道路とみなし、その間の島内区間を含めて国道に指定するという斬新なアイデアは、当時の建設大臣・田中角栄によるものだといわれている。ちなみに、角栄といえば1946年に
「谷川岳を切り崩す。そうすれば新潟に雪は降らなくなる。崩した土で佐渡海峡を埋めるんだ。雪は関東にも平等に降るようになる」
という有名な言葉も残している。