ベビーカー「畳め」「畳むな」 不毛な公共交通論争に終止符を!「日本は遅れている」も聞き飽きた? システム改革で根本解決しかない

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公共交通におけるベビーカー利用は、利用者同士のトラブルを引き起こすことが多い。2022年の調査では、6割のベビーカー利用者が「不快な思いをした」と回答し、議論が続く中、問題解決には制度改革とインフラの整備が不可欠である。

問題を解決しない倫理論争

海外のバス(画像:写真AC)
海外のバス(画像:写真AC)

「ベビーカーを畳めと言うのは冷たい」
「利用者が周囲に配慮すべきだ」

といった主張はどちらも一理あり、立場によって“正義”が変わる問題である。アンケート結果では、「ときどき迷惑に感じる」が27.3%、「よくある」が7.2%と、一定数の乗客が不快に思っていることがわかる。一方で、「迷惑をかけまいと、抱っこ紐を利用する」といった回答も見受けられる。

 重要なのは、こうした議論を続けても、乗客の価値観はすぐには変わらず、結果的に似たようなトラブルが繰り返されることだ。社会の倫理観が急に変わることはない以上、「個々人のモラルに頼る」方法では解決には至らない。

 またSNSでは

「欧米ではベビーカー利用者にもっと優しい」
「日本は遅れている」

といった指摘が見られるが、これらの比較は実情を無視している。

 例えば、欧州の多くの都市では、バスや鉄道の車両設計が日本とは異なる傾向がある。ロンドンのバスでは、車いすやベビーカー用の専用スペースが広く、乗降口がフラットになっていることが一般的だ。一方、日本のバスは比較的小型の車両が多く、都市部の混雑も影響して、スペースに限りがあることがしばしば見受けられる。鉄道についても、欧州ではバリアフリー設計が進んでいる一方で、日本では駅構造が古いため、全面的な改修には時間がかかることがある。

 単純に「海外ではできている」と比較しても、都市設計や交通インフラの違いを無視しているため、問題の本質には迫れない。「海外を見習え」という声があっても、実行可能な解決策を示さない限り、ただの

「感情的な批判」

に過ぎない。

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