空きスペースで特産品を輸送! 交通事業者の「貨客混載」はコロナ後の頼れる収益源となれるか

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旅客輸送の空スペースを使用して生鮮品などを運搬する産直の試みが注目されている。JR東日本は新幹線網を活用して地方の特産品の流通を促進している。

JR東日本やANAも参戦

日本産直空輸による大手小売店での試験販売の様子(画像:ANA)
日本産直空輸による大手小売店での試験販売の様子(画像:ANA)

 東日本旅客鉄道(JR東日本)はかねてより、新幹線網を活用して地方の特産品の流通を促進している。2022年2月13~14日にはJR東京駅の「グランスタ東京」(千代田区)のイベントスペースで、東北新幹線なすの268号で運ばれた栃木県産の完熟いちごを販売している。完熟いちごは果肉の柔らかさゆえ振動に弱く、振動の少ない新幹線は輸送手段として適しているとしている。当日は栃木県観光PRコーナーも設置された。

 また、新幹線だけでなく在来線でも実施されており、JR東日本大宮支社では2月11~13日に宇都宮線普通列車で運ばれた栃木県産のいちご「ロイヤルクイーン」をJR浦和駅のエキナカで販売した。

 ロイヤルクイーンは中まで赤く熟す品種で、生産量が少なく、デリケートなため県外ではあまり流通しない。JR東日本では2021年10月5日から新幹線などの列車を活用した荷物輸送サービスを「はこビュン」と名付けて本格的な展開を図っている。サービスの一環として、新幹線で運ばれた朝採れ野菜や朝絞り日本酒など希少な商品をエキナカで販売していくとしている。

 また2022年1月15日には、全日本空港(ANA)が産直品を空輸し販売する新会社・日本産直空輸をスタートさせている。同社の目的は、飛行機で農作物や魚介類を首都圏などの大消費地に輸送し、食品の鮮度の価値を最大限引き出すことだ。

 さらに旅客機の貨客混載によって少量生産の生産物の輸送も可能とし、大都市圏にはなかなか出回らなかった生産品を流通していくとしている。2021年からは複数の大手小売店と連携して実証実験も行ってきた。新会社としての営業開始は2022年4月からだ。

 コロナ禍で旅行や外出が制限されたなか、消費者は全国各地の特産物や食文化により興味を持つようになっている。交通機関の産直店舗は商業施設開発の視点からも新たな付加価値を生み出すものとして注目される。

 かつて、2000年代後半には産直ブームがあり、鮮度をうたうために食材の産地を明記した飲食店が多く出現した。しかし、産直は提供される食材の味自体に説得力がなければ形骸化してしまう。これからの交通事業者は商品の価値を見極めるバイヤーとしての資質も問われそうである。新たな食文化を提供してくれる産直店舗が増えることに期待したい。

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