空きスペースで特産品を輸送! 交通事業者の「貨客混載」はコロナ後の頼れる収益源となれるか

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旅客輸送の空スペースを使用して生鮮品などを運搬する産直の試みが注目されている。JR東日本は新幹線網を活用して地方の特産品の流通を促進している。

地域活性化の側面も

貨客混載のイメージ(画像:ビオスタイル)
貨客混載のイメージ(画像:ビオスタイル)

 さらに、過疎が深刻な地域での交通・物流インフラを維持するために、地方でもローカル鉄道や路面電車、バスなどの交通機関と宅配業者が連携する試みが拡大した。

 2017年9月、国道交通省は過疎地などでバスやタクシー、トラックが貨客混載しやすくなるよう規制を緩和している。

 コロナ収束後も宅配業務は一層増加すると考えられており、それに対して宅配業者のトラックドライバー不足は解消のめどが立たない。そのため、貨客混載で宅配業者の物流を補完する需要は今後も拡大するだろう。

 そして、宅配業者との連携以外にも、貨客混載では地域の生鮮品や特産品をスピーディーに都市部に直送し、地域活性化につなげる取り組みも促進されている。

 飛行機や鉄道、高速バスなどの広域交通網を使って効率的に生鮮品や特産品を輸送し、鮮度などの価値を最大化するビジネスが2010年代の後半から見られるようになっている。鮮度だけではなく、小口でも輸送できることから少数生産の希少な食材を輸送できるメリットがあり、地域の知られざる特産物を掘り起こせる可能性もある。

2020年に新宿に関連施設がオープン

新宿区にある「バスあいのり3丁目テラス」(画像:(C)Google)
新宿区にある「バスあいのり3丁目テラス」(画像:(C)Google)

 感染対策が拡大していた期間は観光や帰省などの旅行需要が壊滅状態となり、飛行機や新幹線など、広域での旅客輸送の需要が壊滅した。

 広域交通事業者では収益確保のため、客混載輸送による新たな物流ビジネスを拡大させる動きが一層活発化した。コロナ禍で販売が落ち込んでいる地域の生産者を支援するという意味でも、この取り組みは意義があると言える。

 近年は貨客混載で直送した食品の販売や、直送した食材を使ったメニューを提供する飲食店の展開が見られる。

 2020年9月にオープンした「バスあいのり3丁目テラス」(新宿区)は、旅客用高速バスで輸送した食材を提供する飲食店舗と緑のテラスから構成される施設。農産物販売企画のアップクオリティと三菱地所は協業して、2018年から旅客用高速バスの空トランクを活用した貨客混載「産地直送あいのり便」に取り組んでおり、同施設は輸送してきた地方の魅力を体験できる場として開発された。

 食材は主に高速バスが運び、「バスタ新宿」などで受け取られ、そのまま施設へ納品される。同施設は地方の新鮮で珍しい食材を、ハンバーガーやピザ、丼もの、スイーツなどのカジュアルなメニューにして提供。開放的なスペースに大型ビジョンが設置されてさまざまなイベントにも対応でき、定期的に一定の地域にスポットライトを当て、観光と食を連動させたフェアやイベントも行っている。

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