自動車メーカーはなぜ「水性塗料」にシフトするのか? トヨタ、マツダ…環境対策で変わる塗装の現場とは

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自動車塗装業界は、VOC排出規制強化を受けて、水性塗料への移行が加速している。特にトヨタやマツダの事例に見るように、環境負荷削減と作業環境改善が進むなか、技術革新によるコスト削減も期待されている。欧米の規制強化とともに、グローバル規模での水性塗料導入が進んでおり、今後さらに加速することが予想される。

水性塗料の技術革新と課題

自動車の塗装の作業風景(画像:写真AC)
自動車の塗装の作業風景(画像:写真AC)

 自動車塗装業界における水性塗料への移行は、技術革新により着実に進展している。しかし、依然としていくつかの課題が存在する。

 ひとつは、水性塗料の価格が溶剤系塗料とほぼ同等であるものの、塗装設備の改修が必要となる場合がある点だ。水性塗料を使用するためには、塗装ブースの換気システムや乾燥設備の改修が求められることがあり、そのため初期投資がかかる。このため、中小規模の塗装工場では、移行が進んでいないケースも見受けられる。これに対して、政府の補助金制度や塗料メーカーからの技術支援など、導入障壁を下げるための対策が重要となる。

 さらに、水性塗料は溶剤系塗料に比べて温度や湿度に敏感であり、乾燥速度が遅いという欠点もある。これにより作業効率に影響を与える可能性があり、適切な設備投資や作業者教育、新技術への適応が求められる。

 水性塗料の技術革新は今後も続き、さらなる性能向上やコスト削減が期待されるとともに、残された課題を解決するための取り組みも重要である。産官学連携による研究開発や国際的な協力体制の構築を通じて、水性塗料の普及を促進し、持続可能な自動車産業の発展に貢献していくことが求められる。

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