自動車メーカーはなぜ「水性塗料」にシフトするのか? トヨタ、マツダ…環境対策で変わる塗装の現場とは
自動車塗装業界は、VOC排出規制強化を受けて、水性塗料への移行が加速している。特にトヨタやマツダの事例に見るように、環境負荷削減と作業環境改善が進むなか、技術革新によるコスト削減も期待されている。欧米の規制強化とともに、グローバル規模での水性塗料導入が進んでおり、今後さらに加速することが予想される。
移行は日本にとどまらず、世界的な動き

水性塗料への移行は、日本国内にとどまらず、世界的な動きとなっている。先述の通り、EUでは溶剤系塗料の使用が厳しく制限されており、この影響を受けて海外の自動車メーカーでも同様の取り組みが進んでいる。
例えば、BMWグループは1990年代から、世界中のほぼすべての工場で有機溶剤系塗料から水性塗料への切り替えを進めており、日本においても2002(平成14)年にBMW新車整備センターで補修用塗料を全色水性塗料に変更した。
また、環境意識の高まりを背景に、大手塗料メーカーである日本ペイントホールディングスの財務ハイライトによると、環境配慮型製品の一環として水性塗料の比率は増加傾向にあり、2018年から2021年にかけてその比率は83.8%から89.9%にまで上昇している。この背景には、顧客の環境意識の高まりがあり、環境配慮型製品の需要の増加が影響している。
これらの要因が重なることで、自動車塗装業界における水性塗料への移行は今後さらに加速することが予想される。