自動車メーカーはなぜ「水性塗料」にシフトするのか? トヨタ、マツダ…環境対策で変わる塗装の現場とは
自動車塗装業界は、VOC排出規制強化を受けて、水性塗料への移行が加速している。特にトヨタやマツダの事例に見るように、環境負荷削減と作業環境改善が進むなか、技術革新によるコスト削減も期待されている。欧米の規制強化とともに、グローバル規模での水性塗料導入が進んでおり、今後さらに加速することが予想される。
塗装における環境規制の強化

自動車塗装業界では、環境保護と健康リスク低減を目的とした水性塗料への移行が急速に進んでいる。その主要な要因は、揮発性有機化合物(VOC)の排出規制の強化だ。環境省のデータによれば、VOCの発生源として塗料からの揮発が最も多く、全体の約4割を占めている。
欧州では、2007年頃から欧州連合(EU)指令に基づきVOC排出規制の一環として水性塗料の導入が義務化された。さらに、2009年からは米国のカリフォルニア州が大気資源局(CARB)による厳格なVOC規制を制定し、この規制は他州にも広がり、最終的には全米規模で普及していった。
日本でも、2006(平成18)年4月1日から大気汚染防止法の改正によりVOCの排出規制が導入され、自動車産業だけでなく、塗装、接着、印刷、化学製品製造など、さまざまな業種に対して規制が適用されている。
VOCは光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の生成を促し、大気汚染や健康被害を引き起こす可能性があるため、これらの削減は急務とされている。
このような規制の背景を踏まえ、なぜ自動車塗装業界における水性塗料への移行が加速しているのか。その理由と具体的な事例について、さらに詳しく解説する。