なぜ「電動バス」導入には問題が多いのか? 500台で年間5億円の燃料費削減も、バス会社が既存車両の「寿命」を重視するワケ

キーワード :
,
国内の電動バス市場が加速するなか、初期費用の高さが普及の障壁となっている。新技術の導入や車両のライフスパン延長が鍵となり、コスト削減に向けた革新が求められる。車両の維持管理やバッテリー技術の向上を進めることで、持続可能な公共交通への道が開かれる。

車両寿命延長のリスク管理

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 課題とその解決策には次のような要素がある。

 まず、技術とコストのバランスだ。モジュール化や各種技術革新には多額の開発費がかかるが、現時点で技術研究は進んでいるものの、まだ社会に浸透する段階には至っていない。長期的な視点で見ると、リファービッシュも有効な選択肢であり、電動化から自動運転への流れを早急に確立することが重要だ。そのためには、グリーンイノベーション政策を通じた公的補助に期待するべきだ。

 次に、車両寿命の延長がもたらすリスクについてだ。専門家のなかには、車体の老朽化が安全性に対する懸念を引き起こすとの指摘がある。これに対して、適切なメンテナンス体制の構築は必須だが、筆者は鉄道車両の事業者が電動化という観点から整備を得意としており、新たなビジネスとして参入する可能性に期待している。鉄道とバスを同一グループで運営している事業者は、特にこの分野で積極的にアクションを起こし、その範囲を広げるべきだ。鉄道事業者の新しい活躍の場は、電動バスの整備にあると考えている。

 最後に、導入事業者の意識改革が重要だ。バス事業者は目先の利益にとらわれず、電動化から自動運転の進展という長期的なロードマップを描くべきだ。電動バスと車両寿命の延長化は、短期的なコスト削減ではなく、中長期的な投資効果を考慮するべきであり、特に運転手の確保に寄与する部分が大きい。バス事業者には、短期的視点に偏らず、バックキャスト的に長期的な視点での計画を立ててほしい。

全てのコメントを見る