なぜ「電動バス」導入には問題が多いのか? 500台で年間5億円の燃料費削減も、バス会社が既存車両の「寿命」を重視するワケ
国内の電動バス市場が加速するなか、初期費用の高さが普及の障壁となっている。新技術の導入や車両のライフスパン延長が鍵となり、コスト削減に向けた革新が求められる。車両の維持管理やバッテリー技術の向上を進めることで、持続可能な公共交通への道が開かれる。
電動バス導入の課題とコスト負担

現在、路線バスの車両寿命は、ディーゼルバスの場合、新車導入から
「13~16年」
で廃車となることが多い。国産ディーゼルバスの場合、大型ノンステップバスで1両2200万円程度、国産ハイブリッドバスで1両3300万円程度が本体価格となる。一度廃車となった後は、約10年程度、地方都市で活躍することが多く、中古車として販売すればある程度の利益を得られることがある。
一方、電動バスはバッテリーの耐用年数が寿命の主な制約要因となる。中国のBYD製大型ノンステップ電動バスは1両3900万円程度だが、新車導入から
「8~10年」
で寿命が来るとの試算もあり、従来と同じ長さで活用する場合、バッテリー交換が1回必要となることが予想される。交換費用は900~1000万円程度とされ、電動バスの新車導入から廃車までには、合計で約5000万円程度のコストがかかることになる。
しかし、国内では電動バスがまだ長期間稼働している事例が少なく、リチウムイオンバッテリーの劣化具合に関する確かなビッグデータは存在していない。また、路線バスがどのように走行することでリチウムイオンバッテリーが劣化するかをシミュレーションするシステムにも決定的な解決策はなく、この点も電動バス普及の意思決定に影響を与えている。