自転車まるごと「サイクルトレイン」 年々増加も、事業を阻む「四つの問題点」
首都圏でも好評

ローカル線での効果は明らかになったサイクルトレインだが、都市部ではどうだろうか。
首都圏の鉄道で初めてサイクルトレインを導入したのは、前述の西武鉄道だ。同社は2021年7月から9月まで、多摩川線にてサイクルトレインの実証実験を実施した。
9月20日までの利用者は延べ2200人。アンケート調査で5段階のうち平均「4.67」と好評価を受け、「行き先で自転車を使えて移動が楽になった」ことを踏まえて、実証実験終了を前に、10月から本格実施することを決めている(『読売新聞』2021年9月29日付)。
多摩川線では現在、平日は午前9時~17時、土日祝日は終日、サイクルトレインを実施している。府中市が自由通路を一部管理する多磨駅を除く、
・武蔵境
・新小金井
・白糸台
・競艇場前
・是政
の5駅で自転車をたたまずに持ち込める。
西武鉄道の事例からも、サイクルトレインはサイクリング需要だけではなく、「普段遣い」としての需要も明らかだ。そんなサイクルトレインだが、さらなる普及に向けて、どのような課題があるのか。
研究論文が示す未来

『国際交通安全学会誌』23巻4号掲載の、金利昭・中島一貴「地方鉄道への自転車持ち込みに関する事例調査 サイクルトレインの普及に向けて」では、鉄道事業者への調査を基に、問題点を抽出している。これによれば、
・改札口が狭く、自転車がスムーズに通れない駅がある
・ホームと車両の段差が大きい場合には、力の弱い女性や高齢者にとって障害となる
・駅舎やホームが狭い場合、接触が起こりやすい
・乗降に時間がかかり利用者が多い場合には、定時性に影響が出る
が主な問題点として挙げられている。
この論文では現地の実情に合わせて、まず「時間帯」「区間」を限定し、イベント的にスタートした上で段階的に発展させることを提案している。
西武鉄道のように、実験的に始めて制度化するのは理にかなっている。