自転車まるごと「サイクルトレイン」 年々増加も、事業を阻む「四つの問題点」
自転車をたたまずに電車へ持ち込める「サイクルトレイン」が全国で人気だ。首都圏の鉄道で初めて導入したのは西武鉄道。今後の需要拡大に向けて何が必要なのか。
認知され始めたサイクルトレイン
自転車をたたまずに電車へ持ち込めれば、人々の移動は格段に便利になるだろう。それができる「サイクルトレイン」が全国各地で増えている。
未経験者のために、まず説明しよう。自転車を持って電車に乗ることは通常、「輪行(りんこう)」と呼ぶ。輪行のルールは、
・JR東日本「両輪を外して、袋からはみ出さないようにする」
・小田急電鉄「両輪を外して、袋からはみ出さないようにする」
など、表記に違いはあるものの、自転車用品店で販売されている輪行袋にはみ出さないように収納することを義務づけていることは同じだ。収納のためには車体からサドルやハンドル、車輪などを工具を用いて分解する作業が必要だ。
こうした手間のかかる事情もあり、サイクリング趣味の人がやることだったが、前述のサイクルトレインのサービス拡大で、一般的に認知され始めている。
ローカル線での成功
中でも注目すべきなのが、2022年4月からサービスを拡大している和歌山県内のJR紀勢本線(きのくに線)だ。同線は2021年9月から11月まで紀伊田辺~新宮間でサイクルトレインを実施していたが、その区間を御坊駅まで延伸した。
利用時間は平日午前9時から終電まで。土日祝日は終日、すべての普通列車で自転車をそのまま持ち込めるようになった。自転車は車内の手すりなどにバンドで固定するのがルールだ。
サービス拡大の背景にあったのは、
・新型コロナウイルス感染拡大による利用者減少
・通学以外の需要の少なさ
があった。
そんな同線でサイクルトレインを利用した人は、3か月間で延べ2400人以上に及んだ。この結果を見れば、新たな需要を呼び込む効果は確かにあったと言えよう。