「インバウンドだけ課税しろ」 “宿泊税”の使い道に不満噴出! 観光振興はそもそも誰のためなのか?
宿泊税は全国で導入が進み、観光振興のための財源として期待されている。しかし、その運用にはさまざまな課題が浮き彫りになっている。宿泊税の目的は観光振興にあるが、地域全体の公共サービスにも貢献するという視点が重要だ。そのため、税収の使い道や負担と受益のバランスを見直す必要がある。
観光立国の財源確保戦略

宿泊税導入が進む背景には、2023年3月に閣議決定された「観光立国推進基本計画」がある。この計画では、ポストコロナ時代を見据えて、従来の「人数重視」の方針を見直し、ひとり当たりの旅行消費額を増やすことを重視する方針が打ち出された。
観光政策の転換を実現するためには、自治体における安定した財源確保が必要不可欠だ。しかし、従来の税収や交付金だけでは、観光振興に必要な予算を確保するのは難しい。そのため、全国の自治体は観光客の宿泊を対象にした新たな財源、宿泊税に注目した。
自治体の税収は主に固定資産税と住民税で構成されているが、これらだけでは十分な税収を得られない市町村が多い。そのため、国が地方交付税交付金として不足分を補っている。
この交付金は人口規模を基に算出されており、住民の行政サービスを支えるためのものだ。観光客が増えても交付金が増えるわけではなく、観光振興で住民の所得が増加すれば住民税収入も増える可能性があるが、多くの自治体は人口減少に直面している。
こうした状況を考慮すると、観光振興のための独自財源を確保することが重要となる。求められるのは以下のふたつの要件を満たす新たな税制だ。
・観光振興専用の財源であること。既存の税収は住民サービスに充てられるため、観光振興専用の安定した財源が必要。
・観光振興の成果を地域の財源として取り込む仕組みであること。観光客の増加や消費拡大を自治体の新たな収入として確実に反映できる制度が求められる。
これらの要件を満たす手段として、宿泊税が多くの自治体にとって有力な選択肢となっている。