昭和の夜汽車を再現! 大井川鐵道「SL夜行」 チケット3分で完売の衝撃、ファンに愛された当日を振り返る
夜汽車の記憶
12月7日、SL列車で知られる静岡の大井川鐵道で、蒸気機関車がけん引する夜行列車が走った。かつての日本の汽車旅の再現に鉄道ファンが注目、チケットは発売とともに売り切れたという。
一夜を過ごした臨時列車をふりかえりながら、昭和の夜行列車の思い出をたどってみた。
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夜行列車と聞いて、思い浮かぶものは何だろうか。
青函トンネルを抜けて北海道へと向かった「北斗星」「カシオペア」「トワイライトエクスプレス」などの華やかな寝台特急をイメージする人もいるだろうし、もう少し上の世代には、東京や京都、大阪と山陽・山陰・九州方面を結んださまざまな長距離列車を思い出す方々もいるかもしれない。
歌にまでなった「上野発の夜行列車」をイメージする人も多いだろう。満員の特急や急行が次々と出発していく上野駅のプラットホームは圧巻だった。毎日十数本の列車が雁行(がんこう)して東北本線や常磐線を駆け抜け、終着駅の青森で青函連絡船に接続していた。
関東や関西の主要駅から出発していた夜行快速列車「ムーンライト」も記憶に新しい。最後まで運転していた「ムーンライトながら」も、終焉(しゅうえん)からすでに4年たった。これらの多くは国鉄時代の普通夜行列車をルーツにもつものだった。青春18きっぷを手に、夜行快速の一夜から長い各駅停車の旅にチャレンジした若者たちも多い。
全国に広がった新幹線網や格安な航空券、さらには手頃な料金の高速バスの人気によって、長大な編成で一晩かけて目的地に向かう夜行列車は過去のものになった。現在、定期の夜行は東京と高松・出雲市を結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」だけである。車内に個室を連ねた人気列車であり、乗客にとってはこの列車に乗ること自体が旅の大きなイベントとなっているようだ。