タクラマカン砂漠「環状鉄道」が6月開業 投資加速も立ちふさがる人権問題
中国最大の砂漠・タクラマカン砂漠の南側を走る和若鉄道が2022年6月、開業する。同鉄道の経済効果が期待される一方、課題も少なくない。
新疆ウイグル自治区のポテンシャル
和若鉄道が走る新疆ウイグル自治区は中国北西部に位置し、中国総面積の約6分の1を占める。改革・解放以来発展が続いているが、沿海地域との格差は大きく、交通網の整備が急務とされてきた。地域の経済発展を後押しするのは、
・豊富な天然資源
・地理的な位置
である。
天然資源は全土にわたって豊富で、油田のほか、レアメタルも発見されている。2002年にはタリム盆地北端で地下水資源が発見され、その貯蔵量は360億立方メートルと見込まれている。これは、2009年に完成した世界最大の水力発電所・三峡ダム(湖北省)に匹敵する。
こうした資源に加えて、
・インド
・モンゴル
・ロシア
など多くの国と国境を接しており、生産物の輸出にも適している。
習近平国家主席が提唱・推進する、アジアと中東・欧州を結ぶ経済圏構想「一帯一路」の基幹となっているのが鉄道を用いた貨物輸送だ。2017年にはロンドンと浙江省イーウー(義烏)市を結ぶ貨物列車が運行されるなど、経済的な結びつきが強まっている。なお同市は、日本で雑貨の集散地として知られている。
こうしたなか、和若鉄道は開発の遅れていた南部の経済活動を活発化させると期待されている。2月にはカシュガル県バチュ郡で新たな物流拠点の建設がスタート。南部の農村地域と連携し、国内外への出荷拠点となることが期待されている。
また同県マイガイティ郡では、総投資額1億5000万元(約28億円)の畜産業安定化プロジェクトが行われるなど、鉄道開通を前に、経済発展を見込んだ投資が加速している。