EVこそ電力不足時の「救世主」? 安易な過信に潜む“思いがけない誤算”とは

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初の「電力需給逼迫警報」の発令によって、EV普及の賛否があらためて問われた災害大国・日本。実際のところ、EVは災害時にどの程度バッテリーとしての役割を果たせるのか?

PHEVが「現時点で最良」と言えるワケ

 PHEVであれば、少なくとも燃料の給油は短時間で済むわけだし、BEVのように延々と充電をしてフル充電になるのを待つ必要もない。

 発電でガソリンエンジンを使えば脱炭素の考え方に反すると言われそうだが、BEVにしろ排気ガスを出さないのは単に消費する過程での話。BEVで使う電力も現状では化石燃料に頼っている現実は無視できない。

 ではPHEVで電力を供給した場合、どのぐらい給電は可能なのだろうか。

 トヨタ「RAV4」を例にすれば搭載バッテリーは18.1kWhで、リーフの3分の1位以下しかないが、それでも1日半程度の電力は供給できる計算になる。仮にバッテリーが底をついても、ガソリンが残っていれば停電に関係なく充電は可能になるわけで、その意味ではむしろBEVよりも非常時の電源として役立つ能力を備えているとも言えるのだ。

 一方、BEVでも小型バッテリー搭載車を増やすならば話は少し違ってくる。

 たとえば日産と三菱が予定している軽EVは、搭載バッテリー20kWh前後と小さい。もちろん、電源供給源として考えればフル充電で1日半程度しかもたないし、バッテリーを使い切ってしまえば“タダの箱”となるのは同じだ。

 しかし、容量が小さいということは充電時の負荷も小さく、充電時間もその分だけ短くて済む。その意味で、少ない容量のBEVならフル充電にしやすく、日常の電源供給源としてもより使いやすいと思うのだ。

 さらに言えば、大容量バッテリーを搭載した場合、その重量はその分だけ重くなる。仮に日常の走行距離が短ければ、それこそ重いバッテリーを運ぶ無駄が発生するわけで、これが小型バッテリー車ならその無駄も軽減できることも考える必要があるだろう。

 脱炭素へ歩むことはとても大切なことだ。しかし、ウクライナで発生した悲惨な戦争は、今後のエネルギーの需給にどう影響を与えるか予断を許さない状況にある。

 そうした状況を踏まえれば、現時点の電力供給体制でBEV一辺倒になるのは現実的ではないと考えるのが妥当だろう。エネルギーの需給バランスを注視しながら、バイブリッド車を含めて徐々に完全電動化への道を進んでいけば良いのではないだろうか。

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