EVこそ電力不足時の「救世主」? 安易な過信に潜む“思いがけない誤算”とは
初の「電力需給逼迫警報」の発令によって、EV普及の賛否があらためて問われた災害大国・日本。実際のところ、EVは災害時にどの程度バッテリーとしての役割を果たせるのか?
BEV普及への“絶対条件”
将来の構想としては、停車中のEVや太陽光発電、蓄電池などをまとめて管理し、地域の発電・蓄電・需要を一つの発電所のようにコントロールして活用する「バーチャル・パワー・プラント(VPP)」という仕組みもある。
これは、太陽光発電など天候に左右されやすい再生可能エネルギーの課題解決に向けて構想された仕組みで、余った電力を地域内へ回して相互利用するという考え方だ。
これを使えば、あるいはBEVの有効活用に役立つかもしれない。ただ、これも地域で信頼関係がしっかり築かれていればこそ成り立つ仕組みだ。どこでもこれが実現できるというわけではないだろう。
さらに言えば、BEVが充電を始めたときの課題も考えておかなければならない。
電力供給が不安定なまま、仮に一般家庭5日分のバッテリーを持つBEVが一斉に充電を始めたらどうなるか。
BEVの普及台数がわずか1%にも満たない現時点なら問題にはならないものが、1割、2割と普及していった場合は、それこそ現在の電力事情では電力不足が発生しかねない恐れが出てくるのだ。
その意味で、大容量のバッテリー搭載車が増やすのは、電力のインフラがBEVの充電が賄えるようになってから行うべきなのだ。
そうした状況を鑑みた場合、電力も供給できて自己発電もできるクルマ、つまりプラグイン・ハイブリッド(PHEV)車こそが現時点では最良の選択になるのではないかだろうか。