EVこそ電力不足時の「救世主」? 安易な過信に潜む“思いがけない誤算”とは
初の「電力需給逼迫警報」の発令によって、EV普及の賛否があらためて問われた災害大国・日本。実際のところ、EVは災害時にどの程度バッテリーとしての役割を果たせるのか?
日産リーフなら家庭電力5日分だが……
確かにもっとも身近なBEVの一つである日産リーフを例に取れば、大容量バッテリー搭載車でその容量は62kWh。これは一般的な家庭の電力5日分に相当するという。つまり、フル充電であったならばこの5日間は電力に困らないというわけだ。
ただ、これには家庭用電源として取り込むV2Hと呼ばれる、BEVなどから電気を取り入れる専用のパワーステーションが必要になる。価格は家庭用の30Aに相当する3KVA未満の仕様で40~50万円ほど(工事費別)。
この設置をして初めてEVから電源の取り込みが可能となる。もちろん、これは外置きが前提となるため、一戸建てでなければ設置は難しい。そして、電力を供給するBEVも一定程度の電力が残っていることが前提となるのは言うまでもない。
ここで知っておきたいのは、BEVが常にフル充電でいられるのは意外に難しいということだ。
震災はいつやってくるか予測は不可能なわけで、運悪く使い切った状態であれば電源として供給は期待できない。仮に自宅で充電している最中に停電が発生すれば、その時点で蓄えられた電力に期待するしかなくなる。
いつでも急速充電が使えるわけでもなし、大抵は自宅の普通充電を使うことになるから、どうしたってフル充電までには相応の時間がかかることは免れない。これでは電力供給源としては不安が残る。